『炒飯狙撃手』(張國立)をよんでみる。
あぶない場面になると、炒飯をつくって危機をのりこえる、
みたいな紹介があったけど、じっさいは、
さほど炒飯にスポットがあたっているわけではない。
わたしには、どこがおもしろいのか
理解しづらい作品だった。
こんなときには、くちなおしに
すぐれたミステリーがよみたくなる。
キャロル=オコンネルの『ルート66』を手にとった。
マロリーの通報後、20分もたってから
州警察のわかい警官がパトカーからおりてきた場面。
彼は、何試合かで勝利を収め、独力で勝ったと思いこんでいるアスリートの自信を漂わせていた。なお悪いことに、彼はゆったりしたタイプだった。車から降り、食堂までの5、6歩の長旅にそなえて帽子をかぶる
「あのフォードのトランクを開けて欲しいの」マロリーは言った。
ホフマンは優しげな、見下すようなほほえみを見せた。まるで幼稚園を訪問して、親切なおもわりさんを演っているようだ。
わたしのツボにドンピシャではまるうまさだ。
オコンネルの描写には無駄がない。
それでいて、あそびごころにみちている。
それ以外にはないとおもわせる絶妙な角度から、
人物像を的確にいいあらわす。
よんでいるだけでここちよくさせてくれ、
そのうえストーリーもまた格別にうまいのだから たまらない。
オコンネルが特別なのかとおもっていたら、
このまえよんだ『暗闇のサラ』(カリン=スローター)もすごかった。
すんなりとよみすすめるのが困難なほど、
きびしい緊張感をたもちながら読者をふりまわす。
こんな作品にであえたしあわせに感謝する。
日本の、そしてアジアのミステリーは、
欧米のレベルから、まだまだとおくはなされているのでは。