結婚式場ではたらく28歳の女性(靖子)が主人公の「仕事小説」だ。
山本幸久の本は、前回よんだ『ヤングアダルトパパ』がはずれだったので、
ちょっと心配しながらよみはじめる。
でもおもしろかった。
山本幸久は、いっしょうけんめい
はたらいているひとたちをかくととてもうまい。
まじめに仕事をしてるけどまだまだ安定感はなく、
というか、仕事への本気さもないような
未熟なわかものが今回の主人公だ。
まわりからたすけらたり、ときどきちゃんとしかられたりしながら、
気がつくと、それでもすこしずつ仕事ができるようになっていく。
山本幸久の仕事小説はたいていそうしたはなしだ。
仕事って、そうやってがんばるからおもしろいんだということをおもいだす。
わたしは、職員に適切な仕事をあたえ、
その仕事をつうじてひとをそだてるということができなかった。
自分が仕事とはなにかについて、ちゃんとおさえてないから、
ましてやひとをそだてられるわけないのだ。
『凸凹デイズ』にでてきた「凹組」の4人、
ゴミヤと凪海(なみ)ちゃん、それに大滝と黒川が、
この本ではふたたび出演している。
これまでにもちょこちょこっとだれかが顔をだすことはあったが、
こうやって「凹組」というデザイン会社がそのままでてきたので、
『凸凹デイズ』がだいすきなわたしにとってうれしい作品だった。
こわいゴミヤにきついことをいわれても、
「よそ物のあなたにとやかく言われる筋合いはないわ」
と靖子はちゃんといいかえせるようにそだっている。
結婚式まえの花嫁の表情をみて
「彼女は花嫁の顔になっていた。
あたしは女性達が見せるこの顔がすきだ、と靖子は思う」
という箇所がよかった。
個人的なことをかくと、
わたしは結婚式なんかだいきらいだったので、
式だけはあげて披露宴はなし、
ただ両親をまじえての食事会だけ、という
わたしとしてはあたりまえ、
でも世間的にはかなり貧弱な「結婚式」でかんべんしてもらった。
配偶者に世間一般のよろこびを味あわせなかったことを、
この本をよんですこしかんがえてしまった。
彼女はあのときどうおもっていたのだろう。
「ハワイでもう1回挙式しようか?」
なんていったらよろこぶだろうか。
それにしても「凹組」の大滝と黒川が
合コンをたのしみにするとはおもえない。
そういうことを、いちばん距離をおきたがるのが
あの2人ではなかったか。
仕事はできてもオタクでデブな2人を
合コンにさそうナミもどうかしてる。
おもしろくしようといじりすぎて、
むりな設定をもちこんだかんじがする。
ほかの登場人物にしても、
ひとりひとりのキャラクターは
個性的でおもしろいひとがおおいけど、
それが効果的につかわれているかというと、
自由にうごきまわるまえに小説がおわってしまったかんじだ。
もっとながいはなしにしたほうが、
登場人物がいきいきとするだろう。
「凹組」の4人に結婚式場という、
山本幸久がこのんでつかう場面設定なので、
まだまだつづきがかけそうだ。