毎年『本の雑誌1月号』では、その年のベスト10が特集される。
それをうけ、本屋さんでは「本の雑誌○○年第1位」
とかのポップをつけて、大々的に棚にならべたりする。
では、その選考会がどれだけ厳密なものかというと、
かなり、というか、ものすごくいいかげんだ。
本の雑誌社の社員があつまって
「よし、ベストテンを決めていこうか」
ではじまり、
それぞれがもちよった「どうしてもベストテンにいれたい」
作品を発表していく。
それをひととおりきいたあとで、
いきなり
発人 よし、『なずな』がベスト1!!
営B 驚愕の急展開(笑)。じゃあ二位は?
編B 『マザーズ』がいいんじゃないかな。すごいペア(笑)
営B 「今」がわかりますよ。
一位は『なずな』に譲ったんですから、
二位にしてくれないと。
営A 父性と母性の戦い。
発人 『ジェノサイド』も父親の愛がテーマだし(笑)。
この三冊をベスト3にしよう。
営A 潤はベストテンにどうしても入れたいって本はある?
編B 『コンニャク屋』かな。
(中略)
編B え、四位?五位でいいですよ。
俺も謙虚だし(笑)。
営A 『秋葉原』は?事件ものでは別格だよ。
発人 よし、四位!
(中略)
編A 小説が少ないですね。
営A じゃあ、三浦しをんを入れておこう。
発人 八位でいいから。あと、『これが見納め』を十位にしたいな。
営A これで空いているのは六位だけかな?
営B 『エスプレッソ』!
経理 角田さんは? エッセイもすごく楽しいですよ。
発人 それが六位!
というかんじであっけなくきまっていく。
ノミネートされた作家にとっては
つっこみをいれたくなるかるさだろうが、
わたしのしるかぎり毎年おなじ光景がくりかえされている。
椎名誠が参加していたころは、
もっと「鶴の一声」みたいなごりおしも横行していた。
そうやってえらばれた本に、
「本の雑誌○○年第○位」ともちあげるのは、
本屋さんがかってにしていることであり、
その真意をとわれても「本の雑誌社」はあずかりしらぬところだろう。
このテキトーともいえるかるさが「本の雑誌社」の生命線であり、
ほかの会社がやりそうな「いかにも」的な選考会は
この雑誌ににあわない。
それに、そうやってえらばれた本がもしつまらなければ、
「本の雑誌社」の存在価値がとわれることになるが、
そうではなくて、いっけんいいかげんにえらばれた10冊でも、
ほんとうにおもしろければ
その選考の過程を問題にする必要はぜんぜんない。
社の存続をかけてこうした選考をつづけているのは
ひとつの見識ともいえる。
今年のベスト10のうち、わたしがよんだ本は
『ジェノサイド』だけだった。
ちなみに、わたしの「2011年ベスト1」もこの本であり、
以前出版された本をふくめると
小川洋子さんの『博士の愛した数式』がベスト1になる。
この本によってわたしの2011年は
すごくふくらませてもらうことができた。