2012年01月05日

『アンコール遺跡を楽しむ』(波田野直樹・連合出版)

『アンコール遺跡を楽しむ』(波田野直樹・連合出版)

カンボジア旅行でたずねたアンコール遺跡がよかったので、
もうすこしつっこんだことをしりたくなった。
市立図書館で別の本をさがしているときに、
たまたま目についた本書を手にとったら、
これがすごい「あたり」だった。

この本は、ある意味で「奇書」といっていいかもしれない。
よみすすめるうちに、
アンコール遺跡についての歴史や
基礎的な知識をまなべるいっぽうで、
まるで旅行のガイドブックのように
あらゆる情報がさきまわりして読者に提供されている。
アンコール遺跡について、
できるだけ理解をふかめてほしい、
なによりもすきになってもらいたいという
著者の「アンコール愛」を
いたるところでかんじることとなる。

「どんなところに泊まるか」
「アンコール観光の基本スタイル」
「観光の足」
などについてもふれてあるし、
感染症や健康管理までもおさえてある。

おどろいたのは

「障害を持つ人のためのアンコール案内」と題して
車いすを利用するひとにむけて

「以下に、車椅子で訪れるのが
比較的楽だと思われる遺跡を考えてみた」と、
最善とおもわれるまわり方が検討されていることだ。

「アンコール・ワットの場合、
車椅子で行動可能なのは西参道〜第一回廊〜第二回廊まで」
「アンコール・トムの南門はまったく問題ない」
「バイヨンの場合、(中略)
そこへは相当急な階段があるので
あきらめたほうがいい。
もしどうしても行きたいのなら、
四人以上の介助者とロープによる確保が必要だろう」

とこまかく可能性をさぐっている。

こんな記述は『地球の歩き方』シリーズにだってない。
というか、障害者の旅行について
専門にかかれた本でなければ
まずみられないであろう、つっこんだ内容だ。
これは著者の性格からくるものなのだろか。
これを「アンコール愛」といわずして
どう表現したらいいのだろう。

観光の足としてなにをつかうのがいいか、とか
何日あればいい?とか、
ほんとにこまかい。
具体的なホテル名はあげてないにしても、
この一冊で、アンコール遺跡をたずねるときの
具体的な情報がぜんぶカバーされている。

どういうながれでまわったらいいか。
それぞれの遺跡の、どの回廊の、
どのレリーフがいっけんに値するのか。
それはなぜか。
みる位置はどこがいいか。

自分は「遺跡マニアですらない」と
プロローグでことわっているものの、
ここまでくればだれがみてもりっぱなマニアだろう。
なぜ著者がここまでアンコール遺跡にいれこむようになったかも
プロローグでふれてあるので、
ぜひ本書を手にしてもらえたらとおもう。

各章をよむだけで
じゅうぶんに著者のおもいがつたわってくるが、
そのうえに
「アンコール遺跡の歩き方」として、
7編のコラムがはさまれていて、
著者の体験やかんがえがますます自由に展開されている。

「マイナー遺跡群と『遺跡ハンティング』」という章もある。
一般にはしられていない遺跡をどうみつけ、
どうたずねるか、といった
かなりマニアックな内容だ。

「信頼できるバイクタクシーのドライバーを
探すことが第一歩だ。
ゲストハウスにたむろしていて日本語を話す
ナンパ専門のドライバーのようなタイプではなく、
まじめで好奇心に富んだドライバーを
あなた自身の目で探すのだ」

と、マイナー遺跡をたずねるには
そうとうなこころがまえが必要みたいだ。
ここまでくると、ガイドブックというより
なにかの修行みたいなきびしい世界にはいってくる。
「いたりつくせり」と「おせっかい」の分岐点を
たくみにつなわたりした
絶対おすすめの入門書だ。

この本をもってもういちど
アンコール遺跡へでかけたくなった。




posted by カルピス at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする