2012年01月15日

『サッカー批評54号』今年の浦和レッズがたのしみ

ひさしぶりに本屋さんへいく。ほぼ20日ぶりだ。
そのあいだに「本の雑誌」のベスト10が発表されたし、
『おすすめ文庫王国』もでた。
ほかにもチェックした本がいくつかあり、
どれだけたくさんの本がほしくなるか
たのしみなような心配なような、というかんじだった。
でも、棚をながめても、あんがいよみたいものがない。
かったのはけっきょく『サッカー批評』の54号だけだ。
時間がなかったこと、ひとがたくさんでおちついてまわれなかったこと、
図書館でかりた本をいそいでよむ必要があること、
などがブレーキとなった。

『サッカー批評』は2つの記事がおもしろかった。
ひとつは「ミハイロ・ペトロヴィッチの美学を読み解く」(河治良幸)で、
もうひとつは「日本代表のチーム作りに潜在する2つの難問」(西部謙司)だ。
前サンフレッチェ広島監督のペトロヴィッチ氏は、
超攻撃的なシステム3-4-2-1でしられている。
「リスクを負って相手より多くの得点を奪いに行く」
というサッカーで、
ザッケローニ代表監督がイタリア時代につかっていた3-4-3よりも
もっと攻撃への意識がたかいのだそうだ
(残念ながら、わたしはこのシステムについてぜんぜん知識がない)。
伝統的に1-0をもっともうつくしい試合とみる
イタリアに特徴的な美意識よりも
とられたら、またとりかえせばいい、という
「うちあい」のほうがたのしそうだ。

そのペトロヴィッチ氏が、
今シーズンは浦和レッズで指揮をとることになった。
昨シーズンの浦和は、開幕当初から
ベンチとフロントとのあいだの不協和音がささやかれており、
そして、いわれていたとおりのギクシャクしたクラブ運営で
あわや降格か、というきびしいシーズンをおくった。

ペトロヴィッチ監督は、さっそくドイツのケルンから
1年の期限つきで槙野の移籍をもとめ、
(彼は、サンフレッッチェ広島で
かってペトロヴィッチ監督のもとでプレーしていた)、
イングランド2部のレスターから、
全盛期の浦和をささえた阿部勇樹をよびもどしている。

もともと浦和には、山田直樹・原口元気・柏木陽介といった
これからの成長が期待される若手がそだってきている。
移籍してくる実力のある2人とこれらの若手選手、
そして、これまでの浦和をささえてきた鈴木啓太などが
どうからんでチームをつくっていくか。
サポーターのあつい応援でしられ、
資金力もある浦和の監督となることで、
ペトロヴィッチ氏がどんなサッカーをみせてくれるか、
3月の開幕がたのしみになった。

もうひとつの「日本代表のチーム作りに潜在する2つの難問」とは、
1 遠藤のバックアップをどうするか、ということと、
2 格上のチームと試合をして、主導権をにぎれないときに
どういうたたかい方をするのか、という2点である。

まず遠藤がいないときをどうするのか、について。
いま31歳の遠藤選手は、
2014年のW杯ブラジル大会のときには34歳になっている。
プレイできない年齢ではないが、
いざというときのかわりをかんがえておくのは当然だ。
しかし、遠藤のかわりがつとまる選手は
いまのところだれもいない。
日本代表のタクトをふるっているのは遠藤であり、
彼がいなくなるとチームはまったくちがった顔をみせ、
がたがたとくずれてしまう。
これまでに家長と細貝をためしてきたものの、
どちらもチームにあまりなじまなかった。
西部氏はかってのジダン選手をひきあいにだし、
かえのきかない選手の代役をさがすことは、
けっきょくはちがうチームをつくることである、という。

遠藤のちからを最大限にひきだすためには、
センターバックと相方のボランチに
遠藤があわせやすい選手をえらばなければならない。

「つまり”遠藤仕様”のチームになっていかざるをえない。
”違う戦い方”をするとは、違う仕様の、違うチームに
作り替えることにほかならないわけで、
代表チームには現実的にそんな時間はない。
ザッケローニ監督の選択肢も遠藤か、遠藤より見劣りする代役か、
それしか残されていないのではないか」

わたしたちは、とんでもなくすぐれたわかい選手が、
救世主としてあらわれてくれるのをまつしかないのか。

2の、格上のチームと試合をして、主導権をにぎれないときに
どういうたたかい方をするのか、について。

これまでザッケローニ監督は、
なんどか3-4-3システムを導入しようとしてきた。
しかし、これまでためした数試合ではうまく機能しておらず、
これからつかえるようになっていくのか、たしかでない。

「しかし、どちらにしても3-4-3は攻撃型のシステムだ。
いまのところ、日本は守備を想定した戦術を用意していない」

ザッケローニ氏が代表監督になってから、
格上とやったのはアルゼンチンとの試合だけだ。
そして、そのときのアルゼンチンは、
あまりつよいチームではなかった。
本大会の予選リーグでは、
日本よりもランクがうえの国が
当然おなじグループにはいってくる。
さらにベスト4やベスト16をめざすのであれば、
決勝リーグであたるのは、
どこも日本が主導権をにぎれない相手だ。

「ベストメンバーを組んだときの日本は、
一部の国を除けば主導権を握れると信じたいが、
それを証明する機会がないのが現状である」

ことしの日本代表は、ヨーロッパへの遠征を計画している。
そうした機会にほんとうにつよいチームと対戦し、
自分たちのちからを相対的につかむことができるだろう。
でも、それでだめだということになったとき、
南アフリカ大会のときみたいに
きゅうに守備的なチームにかえてしまうのではたのしくない。
このたたかい方でまけたのならしかたない、
とおもえるだけの日本らしいサッカーが、
それまでにかたちづくられているだろうか。

posted by カルピス at 23:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする