『ロボジー』(監督:矢口史靖)をみる。
ロボットのなかにひとがはいってうごく、という
着想だけでひっぱる作品だ。
このアイディアをおもいつきさえすれば、
あとはもう、それに付随してややこしくなっていく状況を
おっかけていくだけでたのしい映画になる。
矢口監督らしく、いつもながらつっこみどころが満載で、
ときどきしらけてくるときもあるけど、
とにかくさいごまでもりあげてくれた。
竹中直人がでるのは予告編でもながれていた
あのトイレのシーンだけで、
むりやりなわらいにならずにすんでいる。
ロボットのなかにはいるのを、
ひとりぐらしのさえない老人に設定したのはうまかった。
老化がひきおこすさまざまな問題を
深刻にあつかう作品はたくさんあるけど、
こんなふうに73歳のおじいさんが
ヒーローになるのはみたことがない。
定年後に、単調でたいくつな生活がはてもなくつづき、
用事といえるのは老人会のあつまりくらい。
そんなとき、突然自分にもういちど
スポットライトをあびるときがおとずれれば
だれだっていきいきとしてくるだろう。
鈴木さんはへんてこな老人ではなく、
常識をわきまえたごくふつうのひとだったので
(サービス精神が旺盛だったり、
まけずぎらいだったりするけど、
それもまたあたりまえのことだ)、
ものがたりがへんな方向にをぶれるのをふせいでくれた。
「ニュー潮風」というチョーださい名前がよかったし、
ロボットの胸にかいてある
「木村電器」もかなしくておかしかった。
「電器」の「電」が旧字体なのがすごい。
すかしたロゴなどではなく、ここはやはり
「木村電器」でなければならないところだ。
いろいろあって、それぞれがおさまるところにおさまって、
平凡な日常がふたたびはじまる。
そんなときにまた・・・、と
ラストがありえないけどすごく気がきいていた。
あのときのうれしそうな鈴木さんの顔が、
この作品でいちばんいいシーンだ。