2012年04月12日

『陽だまりの彼女』それなりにおもしろいけど、ラストまで少々たいくつ

『陽だまりの彼女』(越谷オサム・新潮文庫)

「ベストセラーBOOKTV」で絶賛していた本だ。
まだこの番組をみはじめたばかりのころで、
どの本でもべたぼめすることをしらなかった。
ひとがすすめる本はよんでみたくなる。

中学生のときの真緒も、社会人としてはたらくようになった真緒も、
どちらもすごくかわいい。それがこの作品のすべてだ。
真緒の魅力にひきこまれて、なんとかよみえる。
おもしろくなかったわけではないが、
起伏のないストーリーのわりには
はなしがながすぎた。

ものがたりはなかなかすすまず、
よんでいるうちにだんだんとイライラしてくる。
「僕」が真緒と再会してから1年ほどしか時間はたってないのに、
よみおえたときには、
もう何年もいっしょにくらしていたような気がする。
結婚し、ふたりでの生活をはじめるわけだけど、
とくに劇的な変化がおとずれるわけではない。
なんだかんだとたわいのないできごとがおこり、
ダラダラとページ数がついやされていく。
それらがラストへの伏線でもあることに
よみおえたあと気づくのだが、
よんでいるときは正直いってつらかった。

山本幸久の作品に雰囲気がにていることをかんじた。
山本幸久だったら、もっとじょうずにメリハリをつけるところだろう。

ジム=フジーリ著・村上春樹訳の
『ペット・サウンズ』をよみはじめたものの、
とちゅうでなげだしてこの作品にうつったら、
その『ペット・サウンズ』のことが
重要なエピソードとして設定されていた。
真緒たちが世話をする金魚に、
ビーチ・ボーイズのメンバーの名前がつけられているし、
真緒が機嫌のいいときによくくちずさむのが
『ペット・サウンズ』のなかの
「素敵じゃないか」ということになっている。
こういう偶然もまた本をよむたのしみのひとつだ。
おかげでまた『ペット・サウンズ』にもどることができる。

もうひとつ、本書(文庫本)のカバーイラストには感心しない。
つよくすすめられたからよむ気になったが、
そうでなければまずかう気にならない装丁だ。
真緒をおもわせる、もっと魅力的な女性にしてほしかった。

posted by カルピス at 23:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする