2012年04月19日

古本屋ではたらきたくなる『ビブリア古書堂の事件手帖』

『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上延・メディアワークス文庫)

「おすすめ文庫王国2012」のベスト1作品だ。
どうせろくに活字をよまないわかものむけの
携帯小説みたいなもんだろう、と
あまり期待しないでよみはじめると・・・
おもしろかった。
4つのはなしからなる連作短編集で、
それぞれが微妙につながっている。

ケガで入院中の古本屋の店主(美人)は、
本についての豊富な知識とふかい愛情をもつ。
彼女は現場をみなくても、
本にまつわるわずかな情報から
それぞれの出来事について、
うらにかくされた状況までを推察してしまう。
本の表紙はこの女店長・栞子(しおりこ)さんで、
こんなひとが店番をやっていたら、
なんとかおしゃべりをかわしたいと
わたしも常連客となっていただろう。

古本屋は、わかいころ、わたしがつきたかった仕事だ。
店のおくにすわってすきな本をよんでいたらいいなんて、
なんてすばらしい職業か、とおもっていた。
じっさいは、本についての幅ひろい知識が必要であり、
のんびり本をながめていて、つとまるはずはない。
それでも、いまもまだ、頭のすみで
「本にかこまれてイスにすわっているだけで仕事となるもの」
をもとめている。
古本屋よりも、本がおいてあるサロンみたいなかんじだ。

栞子さんをはじめ、登場人物のだれもが
じっさいにまわりにいそうなひとたちだ。
三上延の本をよむのははじめてで、
ていねいで、神経のいきとどいた作風に好感をもった。
この作品はすでに続編が出版されている。

posted by カルピス at 23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする