車のラジオからスローテンポでかすれた、
でもつやのある声がながれてきた。
「15、16、17と・・・」。
藤圭子だった。
何十年ぶりにきく「圭子の夢は夜ひらく」は、
なんともいえないすごみがあって
おもわずききほれてしまう。
ねっとりとたたみかけてきて、彼女の世界にとりこまれる。
演歌にはきこえない。こういうのをブルースというのだ、と
とっさにおもう。
しらべてみると、藤圭子が19歳のときにうたった曲だ。
19歳でこんな声でうたい、こんな歌詞をこなしてしまうなんて。
目的地までついても車からおりれずに、そのままききいってしまう。
ほかの曲がどうなっているのかしりたくなって、
ツタヤでベストアルバムをかりてきた。
残念ながら、「圭子の夢は夜ひらく」以外はどまんなかをゆく演歌だ。
この曲だけが突然変異でうまれたように異彩をはなっている。
この曲と、うたわれた1970年という時代とは関係がない。
藤圭子がこの曲にであい、あの声でうたったことがすべてだ。