『本の雑誌6月号』の特集は「華麗なる転職」だ。
巻頭特集は座談会による出版社求人広告のよみくらべで、
「徹底調査!」などとおもしろがっているものの、
そうよませる内容ではない。
紹介されている求人広告をみると、
斜陽産業といわれる出版業界でも、
介護職よりも条件ははるかによさそうで、
やっぱり、というか、うらやましいというか。
じっさいに転職を体験したひとの感想ものっている。
1つが出版社をやめて漁師になったひとのもので、
もうひとつは銀行をやめて編集者になったひとがかんじていることだ。
漁師になったひとは、隠岐の海士町に移住されているので、
島根県民としてすごく興味ぶかい。
わたしは船よいするので漁師になろうとおもったことはないが、
いい職場だったら(どの仕事でもいえることだけど)漁師もおもしろそうだ。
いい面をみれば早寝はやおきで、
からだをよくうごかすからごはんもおいしいだろう。
わるい面をあんまりかんがえると転職なんてできない。
転職をあつかったおもしろ本の紹介は、
大矢博子さんの
「覆面介護師からスパイまで
転職小説は気持ちいい」がある。
大矢さんにいわれてみると、
本のおおくは転職をあつかっていることに気づく。
本棚をみると、転職本だらけだ。
たとえば、村上春樹だけをとっても、『羊をめぐる冒険』と
それにつづく『ダンス・ダンス・ダンス』、そして『ねじまき鳥クロニクル』では「僕」が仕事をやめてあたらしい仕事をはじめる立派な転職小説といえる。
仕事をかえるということは、
そのひとの人生におけるおおきな転機であることがおおく、
本のなかで主要なできごととなりやすい。
おおくの転職は、たいへんだけどやりがいのあることとしてかかれており、
わたしがこれまでになんどか転職しているのは、
そうした本の影響があるのかもしれない。
おもしろいほうに人生をころがそうとするときの、
具体的な第一歩は転職なのだろうか。