この作品について、なんの知識ももたないまま映画館にはいる。
『メン・イン・ブラック3』とどっちにしようかとまよいながら
『ダークシャドー』をえらぶ。
正解だった。これは傑作だ。
オープニングでは、ながながと紙芝居みたいな説明がつづき、
おどろおどろしい雰囲気いっぱいで、
こりゃしんどい作品かも、とはやくもぐったりしてしまう。
ポスターにはおしろいをぬったへんな男がのってたし、
時代は中世で、おもく、くらそうだし。
もちろんそれはティム=バートンの演出であり、
しだいにこれはコメディでもあることがしらされる。
ホラーっぽい映像に、あかるいカーペンターズの曲がかぶさると、
とたんにわるふざけをたのしむ
ドタバタコメディにおもむきをかえるのだ。
200年ねむっていたバンパイアが現代社会にあらわれたら、
そりゃたしかに不適応をおこすだろう。
自分にちかづいてくる自動車を「2つ目の妖怪か」ときめつけ、
きどって道路のまんなかでまちうけるバンパイア(ジョニー=ディップ)に
ドライバーが「バーロー!」とただばかにしてすぎさるのが
この作品の上品なわらいを象徴している。
ジョニー=ディップがお城の使用人に催眠術をかけると
完全に寝いってしまい、そのをまた「寝るな!」とあらためておこすのも
すごくばかばかしくてすきなシーンだ。
オープニングで紹介された200年まえとおなじような関係者が
1972年でもおなじような顔で登場するので、
だれがなんの役かさいごまでよくわからない。
でも、あんまりむつかしくかんがえなくても、
ジョニー=ディップと魔女役のエヴァ=グリーンが
ティム=バートン的なものがたりの世界につれていってくれる。
家庭教師役のかわいい女の子や、
すみこみの精神科医のおねえさんなど
せっかくいい味をだしてるのに
あんまりふかめられないままラストをむかえるひともいて、
もったいないといえばもったいない。
そういえば、お屋敷にいたおばあさんも
さいごまでけっきょくたいした出番がなかった。
ま、いいけど、
とおもえてしまうのがこの作品の世界観だ(ほんとか!)。
魔女役のエヴァ=グリーンがいかしていた。
彼女とジョニー=ディップによる
バンパイアと魔女ならではの超はげしいからみは、
この作品のかずあるみせ場のひとつだ。
部屋をめちゃくちゃにこわしておいて
「不覚にも残念な展開であった」はないだろうとおもう。
あんなにエネルギーにみちた妖艶な魔女がいたら、
そりゃバンパイアでなくても手をやくだろう。
ジョニー=ディップも200年もとじこめられたわりには
彼女のことを心底にくんでいるわけではなく、
好敵手というより「おともだち」風な、
気のいい仲間みたいなかんじ。
大わらいもいいけど、おもわずクスクスしたくなるのもすてきだ。
この作品みたいに。