『蒲田行進曲』(1982年・深作欣二監督)
なんとなくみそびれて、というには30年はながすぎる。
気もちのどこかでさけていたのだろう。
深作作品への偏見か、平田満のショボさをきらったのか。
おもしろかった。
映画史にのこる傑作とはおもわないにしろ、
こうしたトホホ映画がわたしはだいすきだ。
小夏や銀ちゃんにつくすことで
ヤスは浄化される。
でもその一生懸命さは、
はたからみるとばかげたおこないでしかない。
なんといっても小夏を演じる松坂慶子がすごくきれいだ。
銀ちゃんにつくしていたころよりも、
ヤスの愛をうけいれ、これまでの生活では
手にしたことがなかったしあわせにひたる彼女がうつくしい。
ヤスを信頼しきった彼女は、少女のように無垢な表情をみせる。
あんな顔をされれば、ヤスでなくても
「このひとのために生きたい」とおもうだろう。
『蒲田行進曲』は、つまりそういう映画だ。
ラストの大団円も気にいっている。
小夏のためにもヤスが生きていてほんとうによかったし、
赤ちゃんも無事に生まれた。
撮影もどうやらうまくいったようだし、
みんながすこしずついい人間になって映画がおわった。
まったくの大団円だった。