2012年07月22日

『学生時代にやらなくてもいい20のこと』(浅井リョウ・文藝春秋)

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ブックレビューに、「あまりにもくだらない」と紹介されていた。
非難しているのではなく、
そのバカバカしさやよし、というかんじで、
どちらかというとほめているニュアンスがつよい。
タイトルがみごとに内容をあらわしていて、
タイトルをおもいついたときに
作者は成功を確信したのではないかとおもう。

大学時代のおろかな行為をありのままにかいただけなのに、
よんでみるとたしかにおかしい。
わたしのおすすめは、
「地獄の100キロハイク」と
「地獄の500キロバイク」だ。
100キロハイクは、埼玉県本庄市から
早稲田大学までの125キロを2日間であるくというもので、
全員仮装しなければならないという必須条件がつく。
浅井さんはバスローブとワイングラスという服装をえらぶ。
「バスローブといえばワイングラス」なのだそうだ。

「ちなみにこれがワイングラスの初使用である。
考えうる限り最大の振幅で
間違った初使用であることは否めない」

荷物になるから私服はもっていかず、
バスローブとワイングラスという姿で電車にのって
スタート地点にむかう。

これら、かんがえること・やることのすべてが
大学生的おろかさの王道をいっている
(バスローブはこのあと雨のなかをあるくときに
驚異的な吸水力を発揮することになる)。

125キロが6区にわけられ、1区ごとに休憩するものの
(3区では寝袋で翌朝までやすむ)、
基本的にはずっとあるきとおしだ。
「4つ目の休憩所では
有志のみが参加する体育祭が行われており」
というのがますます大学生だ。
どれだけアホかだけに意味があるような、
こういうノリがわたしはだいすきで、
体育祭という企画をおもいついた学生をたたえたい。

5区をあるいている最中、
「もしここでリタイアしたら、
きっとこれからの人生ずっと辛い場面で
リタイアし続けることになる気がする。
今日の夜までこの脚で歩き続け、
ゴールすることができたら、
きっと私の中で何かが変わる」

と殊勝なことをいっておいて、

「午後五時辺り、五区の休憩所に着いた。
五区の休憩所は、私のアパートのすぐ近くだった。
私は一瞬でリタイアを検討」するのが
これまた大学生、というか人間か。

やっとこさゴールした著者は感激する。
「本当に、本当に、本当に、本当に、
人生諦めなければ何だってできるのだ。
だけど明日は何もできない。
世界で一番きれいな二律背反が誕生した瞬間だった」

「地獄の500キロバイク」では
友だちと2人で東京から京都まで自転車ではしる。

「二日間自転車をこぎ続ければ
東京から静岡に来られるのだ。
一日おきに授業を取れば自転車通学も可能である」

というのも、授業への参加を中心にかんがえる
いかにも大学生らしい発想がおかしい。

箱根ごえをするときは

「途中、ものすごい急勾配のところもあり、
CGで自転車を消したら
立ち上がった犬みたいになっていたときもあった」

こんな比喩をおもいつけるのは
しっかりあそんできた大学生だけだろう。
やらなくてもいい20のことだけど、
やらないよりも、
やったほうがずっとおもしろそうだ。

posted by カルピス at 21:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする