『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』
(倉下忠憲・技術評論社)
アイデアづくりについての本で、
この本にかいてあることをじっさいにとりくめば、
だれにでもアイデアをだせるだろう。
大切なのは、やるかやらないかであって、
よみものとしてたのしむだけではアイデアはつくれない。
この本によると、アイデアづくりは才能が左右するのではなく、
手間暇をかければだれにでもできるという。
アイデアづくりのセンスがないとあきらめていたわたしにとって
げんきのでてくる本となった。
ただ、この本の最初の部分の、どうやったらメモをとれるか、とか、
連想を広げるトレーニングとしての一人ブレストなどをよむと、
自分でも簡単にとりくめそうで、ワクワクしてくるのに、
アイデアをまとめたり、アウトプットをみすえた整理、などにはいってくると
なんのことだかわからなくなって、
わたしの意気ごみはきゅうに尻すぼみになる。
仕事術についての本をよむと、だいたいこういうながれをたどり、
じっさいの仕事にいかすことができないのが残念なわたしのパターンだ。
倉下さんは比喩がうまく、
この本では、アイデアづくりを畑にたとえて説明している。
・種をみつけ、それを植える
・種から根と芽が伸びる
・実ができあがり、それを収穫する
アイデアについて、おさえておかなければならないのは
以下の2つだけだ。
1「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
(ジェームス=W=ヤング)
2「アイデアを生むためには、手間と時間が必要である」
この本で大切なのはこの2点だけで、
あとはどうしたらそれをスムーズにすすめることができるか、
というノウハウにすぎない。
そのためのツールとして、手帳をつかったり、
エバーノートやiPadといったクラウドの技術もいかしている。
しかし、基本となる部分はアナログかデジタルかは関係がない。
1についてもうすこしおぎなうと、
「カードの操作のなかで、いちばん重要なことは、くみかえ操作である。
知識と知識とを、いろいろにくみかえてみる。
あるいはならべかえてみる。
そうするとしばしば、
一見あんの関係もないようにみえるカードとカードとのあいだに、
おもいもかけぬ関連が存在することに気がつくのである」
(梅棹忠夫・『知的生産の技術』)
2 については、
「アイデアを生み出すためには、準備が必要」である、
ともいいかえてある。
なにかアイデアがうかばないかと、ただまっていても
アイデアをえることはない。
アイデアはなにかのひょうしに空からおちてくるものではなく、
「畑に種をまいて、その成長を待つような簡単な行為」というのだから
才能がなくてもお百姓さんのような勤勉さがあれば、
いい収穫をむかえることができそうだ。
エバーノートとiPadの両方をつかっているのに、
わたしがアイデアをためられなかったり、まとめられなかったりするのは、
けっきょくこの2点が不十分なのだろう。
アイデアをいかす対象としての仕事は
いくらでも目のまえにころがっている。
きゅうに大量の収穫をめざすのではなく、
種をみつけ、うえることからはじめよう。