9月いっぱいは30℃をこすあつさにくるしめられるのが日本の夏なのだと
(「残暑」ではなく、確信犯的に9月は夏なのだ)、
あきらめ気分で10月までを毎年すごしている。
ところが今年は先週の台風16号がいってしまうと、
ありがたいことにきゅうにすずしい風がふきはじめた。秋だ。
夏のくるしさをやりすごすことができるのは、
もうすぐすてきな秋がくるとわかっているからで、
わたしにとって秋こそが正常な感覚をたもち、
おちついてすごせる最高の季節であり、
生きているだけでまるもうけ、というのを
五感全体で実感できる。
キレキレに頭がさえて、すべてがうまくいくようにおもえる。
なにか特別な物質が脳に分泌されるのだろうか。
もう雲の形をみても、空気のにおいにしても、
まちがいなく秋にはいっており、
今年の夏とおわかれできたことはあきらかだ。
夏をなんとかやりすごせたおいわいの行事として
きょうは栗ごはんをつくりサンマをやく。
皮をむくのに1時間くらいかかるけれど、
この栗ごはんとサンマの塩やきにをなんどもたべることで
わたしの秋は完成されるので
つくらないわけにはいかない。
つくり方は、目黒考二さんの『笹塚日記』を参考にしている。
といっても、栗といっしょに塩と昆布をいれるだけだから
「つくり方」というほどのこともない。
面倒なのは、どうやって皮をむくかであり、
今回はむすこに協力してもらう。
包丁になれないむすこが指をきる心配もあったが、
もしそうなってもいい経験になるだろう(ぶじ10個むきおえる)。
500グラム、23個の栗を3.5合のお米でたいたから、
栗がゴロゴロはいっているほんとうの栗ごはんができた。
サンマはカボスをつけるだけ「行事」らしくした。
やきたてをたべることだけに気をくばる。
すずしくなった夜に栗ごはんとサンマをたべ、
ねるまえには虫の声をききながら
いちにちのしめくくりとして黒伊佐錦のみずわりをたのしむ。
今年もつつがなく秋をむかえることができてほんとうによかった。