椎名誠の本は何十冊もをよんでいるのに、
SFはこれがはじめてだ。
いつかはよもうとおもいながら、SFはなんとなく敷居がたかい。
web上の「椎名誠旅する文学館」でこの作品がとりあげられたのをきっかけに、
ようやく本棚からとりだした。
集英社から発売されたのは1990年でも、
オリジナルのアイデアは1972年に
目黒さんの個人誌に発表されているので、
椎名さんは20年ちかくこの作品をあたためていたことになる。
第1章を書き上げたところで椎名さんはいきづまってしまい、
どうしたらいいのか目黒考二さんに相談したのだそうだ。
目黒さんは
「そんなの簡単だよ、これまでのことを全部忘れて、
全然関係ない話を書けばいいんだよ」
というすごいアドバイスをしている。
結果的に内容はうまくつながり、
この作品の構造をふかめることになった。
よんでいると、『地球の長い午後』
・『ブレードランナー』・『風の谷のナウシカ』がおもいうかんだ。
椎名さんは『地球の長い午後』のファンであることが
目黒さんがかいた解説でも紹介されている。
かわった名前の虫や動物がぞろぞろでてきておぞましいうごきをすると、
はじめてよむ椎名誠のSFなのに、
おなじみのシーナワールドにはいった気がしてくる。
そのおかげか、SFになれないわたしでも、
違和感なくよみつづけることができた。
これだけの社会を、リアリティのある世界としてつくりあげた
椎名誠の筆力がすばらしい。
作品の世界がどうつくられたかがしだいにあかされてくると、
複雑にいりくんだ未来社会が、きゅうにスポッとつきぬけて、
はれやかでかわいた世界におもえてきた。
広告が極端に発達したそうぞうしい未来社会は、
かなりちかい形で現代社会に再現されているといえる。
SF3部作といわれるあとの『武装島田倉庫』と『水域』もよんでみたくなった。