2012年11月23日

「問題」はもういい。わたしはしあわせだ。

高野秀行さんへのインタビューが
東京弁護士会の会報誌「リブラ」10月号にとりあげられている。
高野さんがなぜ辺境にひかれるようになったかをていねいにききだしており、
高野さんの方向性をしるうえでも興味ぶかい。

このなかに、
日本人は不幸が好きで幸せが苦手なんじゃないか

という発言がのっていた。
「マイナス面にフォーカスする傾向がある」という指摘だ。
「大変だ」「忙しい」「しんどい」と言ってるほうが人間関係がうまくいく。「不幸ルート」に乗っていると落ち着くというのでしょうか。

日本は景気が低調とはいえ、世界有数の経済力と治安の良さがあり、水や自然が豊かで、60年以上戦争がない社会を実現している。なのに、みんな「日本はダメだ」と言っている。一方で日本に住む外国人の多くは「日本はいい国で、私は幸せ」と言っている。

ほんとうだ。わたしもよく日本批判・日本人批判をしてしまう。
身内のことをたずねられたら
「ぜんぜんダメ、うまくいってない」みたいなことをついいいがちだ。
つまらなぬことだとおもう。
どうせすべてはたいしたことないのだから、とわりきって、
いつも機嫌よくすごしたほうがたのしいにきまっている。
仕事なんかうまくいかないのがあたりまえで、
それにたいしてむつかしい顔をしてかんがえこむのではなく、
まあいろいろあるけど、だいたいうまくいっているんじゃないか、
とおもったほうが気もちよさそうだと、
高野さんの発言をよんでいておもった。
問題はたくさんあるにきまっている。
それを問題とおもうから問題になってしまうのではないか。

高野さんはいま『移民の宴』という本を執筆しているといい、
日本にすむ外国人の生活を
「食」と「コミュニティ」からとりあげようとしている。
「在日外国人」の本といえば、「問題」ばっかりです。在日外国人による犯罪とか在日外国人が受ける差別や偏見とか。でも実際に彼らと付き合ったり取材していると、様々な問題がありながらも、彼らにも普通の生活があって、そちらの比重の方が大きい。でもそっちの面を描いた本は少ないんですよ。日本に長い外国人自身が言ってますよ、「問題の話はもういい」って。どんなものを食べて、どんな恋愛をして、どんな家庭を築いているか、そういう普通の生活を描いて、日本に暮らす外国人を身近な存在にしていくという仕事がしたいですね。

もうひとつ高野さんがとりあげているのは
「日本の風土病ともいうべき『仕事病』」だ。
「仕事=その人の価値」という感覚があまりに強いので、楽しく幸せに暮らしていると、まるで「頑張って仕事をしていない=ダメな人間」みたいな気分に陥るし、周囲からもそう見られてしまう。在日外国人にもその病気にかかってしまう人がいます。

おそろしい。この病気に感染しないためには、
よほどがんばってあそばないと。

posted by カルピス at 10:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 高野秀行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする