『ハスラー』(1961年・アメリカ)
映画をみていると、おもいついたことや
いいセリフをメモにとりたくなることがある。
まっくらな館内で、どうすればメモができるだろう。
いつももちあるいているメモ帳をひらいて、
てきとうなページにかくしかなく、
かいてあるうえから、またかきこんだり、
めちゃくちゃな字をかいてあとでよめなかったりする。
ボイスメモをつかうわけにもいかない。
ほかのひとはどうやっているのかしりたいものだ。
『ハスラー』をみていておもいついたのは、
たまつきやポーカーにいりびたっているひとの人生観についてだ。
映画のなかで彼らはたいていタバコをくわえ、
ウィスキーをのんでいる。
健康についての意識がたかまっている現代からみると、
いかにもからだにわるそうな生活をつづけているわけで、
そういうひとはどういう人生観をもって
生きているのかをしりたくなった。
健康なんてかんがえたことないし、
おとなの男はそうやって時間をつぶすものだ、
となんの疑問ももっていないような気がする。
「そんなにタバコと酒にひたってると、
あとでツケがまわってきますよ」
なんて忠告してもききいれるようなひとたちではなさそうだ。
現在でも、暴力団などの裏社会で生きるひとたちは
酒とタバコというスタイルをつづけているのだろうか。
あんがい兄貴分のヤクザがわかいのにむかって
「タバコもいいかげんにしないとからだにわるいぞ」とか
「おまえ今年の健康診断はもううけたのか?」なんてきいてたりして。
出世しようとしたら健康はだいじだけど、
でもあんまり健康のことをいう「兄貴」は
あちらの社会ではういてしまいそうだし。
作品についてはあまり印象にない。
ポール=ニューマンは『ハスラー』みたいにわかいころよりも、
『スティング』のゴンドルフくらい
おじさん役のほうが魅力がでるようにおもう。
ゴードン役の俳優がいい味をだしているので、
だれかとおもったら『パットン大戦車軍団』のジョージ=C=スコットだった。
相手を自分のペースにひきこむのがほんとうにうまい。
いるだけで場の中心になってしまうすごい存在感だ。
サラにたいする間のとりかたがみごとで、
10代のころ、あんなふうに女性にせっすることができたらと、
あこがれていたことをおもいだした。
ジョージ=C=スコットがいなかったら、
ずいぶんちがった作品になっていたのではないか。
キューでつかれた球が、しずかに台のうえをすべり、
あらかじめきめられていたみたいに
ポケットにおちるのがすごくセクシーだ。
職場と家と、トレーニング場の三角形だけで生きているわたしは
なんて退屈な人生なのだろう。
映画の影響をうけ、かっこよく球をつく自分を想像しながら
背筋をのばして映画館をでた。