『ブラッカムの爆撃機』(ロバート=ウェストール・岩波書店)
『バンド・オブ・ブラザース』をみていると、
イギリスの爆撃機についてかかれた
『ブラッカムの爆撃機』をおもいだした。
この本のはじめとおわりに、
宮崎駿さんがマンガをかいていて、
そのなかで宮崎さんと作者のウェストールさんが
対戦中の爆撃についてはなしている(架空の対談)。
『バンド・オブ・ブラザース』は
アメリカの空挺師団についての作品であり、
この『ブラッカムの爆撃機』は
イギリスがドイツにおこなった爆撃についてかかれたものだ。
爆撃機ウェリントンはアルミ管の骨ぐみに布をはってつくられており、
当然ながら敵の戦闘機や対空砲火にはめっぽうよわい。
イギリスは、このウェリントンやランカスターなどの爆撃機を主力に、
一晩に1000機という、ものすごい数を、
6年間くる日もくる日もおくりだしつづけた。
マンガのなかでウェストールさんが宮崎さんにたずねる。
「あなた達のKAMIKAZEで若者達は
何人死んだのでしょうか?」
宮崎さんが
「4000千人ときいています」
とこたえると、
ウェストールさんは
「4000・・・
・・・いや・・・
充分すぎるが・・・
私達の爆撃機のクルーの死者は
公式でも5万5千名です。
心的障害、負傷、病気、
様々な後遺症・・・
ドイツへの爆撃でこの国は
合計10万の若者を失ったともいわれています」
「・・・・
私達の国には
そんなに飛行機がなかっただけですよ」
宮崎さんは正確をきすべく
自分の発言をおぎなっているが、
イギリスがはらった犠牲のおおきさをしり
おどろいている。
旅客機にのって離着陸するだけでもおそろしいのに、
空には敵の戦闘機が、
地上からはもうれつな弾幕をはる対空砲火が
自分たちののった飛行機をおそってくる。
しかも、その飛行機が布でできているなんて、
かんがえただけでもおそろしい。
脆弱な飛行機を設計し製造した責任者をのろいながら
イギリスのわかものは空にちったのだろうか。
一晩に1000機を6年つづけるなんて、
ひとの命をぜんぜん大切にかんがえてないからできることだ。
7人のりのランカスターがおちれば
それだけで7人が死ぬ。
『バンド・オブ・ブラザース』のなかで
「ちきしょー、ドイツ野郎め、
おれの人生をだいなしにしやがって」
とウェブスターがさけぶシーンがある。
ハーバード大学の学生であるウェブスターは
戦争なんかなければ、というおもいがなおさらつよいのだろう。
ウェブスターだけでなく、おおくのわかものが
戦争によって人生をめちゃくちゃにされた。
勇気とか国への忠誠とかでおだてられ、
布でできた爆撃機にのせられたわかものたちの無念。
「少年達の勇気は、
本来悲劇的なのです。
しかし、この世界の重要な一部です」
とわかれぎわにウェストールさんがかたり、
宮崎さんは、
「ぼくの勇気はいつだって出口がなかっただけだ。
ゲアリーのように反吐まみれになっていたか・・・
ブラッカムのクルーになって
下品でイヤな奴になってたか・・・」
とひとりごちる。
『ブラッカムの爆撃機』のものがたりはわすれてしまったけど、
ウェストールさんと宮崎さんの対談がいつまでも頭にのこる。