『自転車旅行にでかける本』(一条裕子・アテネ書房)
20年ちかくまえに、一条さんがかいた1冊めの本『自転車キャンピング』にであい、
自転車をつかっての旅行をやってみたくなった。
それまでも世界一周などをしたはなしはよんだことがあったが、
一条さんのものはもっと身の丈サイズだ、
勇気や根性がないわたしにも
自転車旅行をたのしめそうにおもえた。
『自転車キャンピング』は、
一条さんがなんとなく東京から下関までの
自転車旅行にでかけたのをきっかけに自転車にめざめ、
大学を卒業した翌年に、
カナダのバンフからアラスカのアンカレッジまでを
はしったところでおわっている。
今回よんだ『自転車旅行にでかける本』はそのつづきだ。
北米大陸から南にくだるのをライフワークにした一条さんは、
何回かにわけてアメリカからメキシコ、グァテマラへと旅行をつづける。
歴史的な大冒険ではないけれど、
日常生活のすぐさきにあるような旅行が
かえって新鮮でうらやましい。
一条さんのふつうさがわたしをひきつける。
ガケからおちておおけがをしたときもあるし、
つんである荷物ごと自転車をぬすまれたこともある。
さみしくてなきそうになっても、
国境をこえるのがこわくてびびっていても、
それでも一条さんは気もちをたてなおして旅行をつづけている。
わたしは『自転車キャンピング』に影響をうけ、
タイからマレーシアへの旅行にでかけた。
それがとんだへっぴりごしのサイクリストで、
車がおおすぎるタイの交通事情にまいってしまい、
自転車をたたんでふつうの旅行者として移動することがおおかった。
自転車旅行に勇気は必要ないけれど、
根性はあったほうがいいようで、
合計でも10日くらいしか自転車にのらなかったとおもう。
自転車ではしるのに、気もちのいい道路ばかりではないことがわかった。
なぜ自転車旅行をするかについて、
一条さんはこうかいている。
「自転車で旅をしていると、
ときおり急にとても幸せな気分におそわれて、
涙がでそうになる。そのときそこに、自転車という
ちっぽけな乗り物に頼ってやって来たことが、
嬉しくてどうしようもなくなる。
自己陶酔かもしれない。
でもそんな気持ちは、ほかのことでは味わえなかった」
一条さんの本をよむと、へたれのわたしでも、
また外国を自転車ではしりたくなってくる。
根性をつけてから、なんていっていたら、
いつまでたっても実行できないので、
わたしでもはしれる国とコースを厳選し、
中高年サイクリストとして再出発をはたしたい。