ひさしぶりに研修会に参加する。
タイトルは「障がい児支援における相談支援の役割について」
といかめしいが、内容はとてもたのしいものだった。
わたしがすむまちの相談支援はまだ軌道にのっておらず、
自立支援協議会も機能していない。
そんなうらみつらみをブツブツぐちりたくなったり、
先進地の実践がうらやましくなるだけの会だったら
つまらないな、と警戒していたけど、
予想はよいほうにうらぎられた。
とても興味ぶかいおはなしで、
これからいろんなことができそうな、
まえむきな気もちで会場をあとにする。
からだのなかを、さっといい風がふきぬけたような
すがすがしい気分だ。
講師は宮崎県からこられた
「障害児・者そうだんサポートセンターはまゆう」の田畑寿明さんで、
「つかみ」がとてもうまい。
宮崎県を紹介するときに、
全国高校サッカーで優勝した鵬翔高校をあげ、
「ロングボールをけりあうのではなく、
中盤からしっかりつないだサッカーのほうが
選手たちもおもしろい」という松崎監督のコメントを引用された。
まるでサッカー解説みたいなはなしだけど、
「これこそが相談支援事業所の仕事です」、
と田畑さんは2つをきれいにむすびつけてしまう。
相談支援事業所の仕事は、
まさに各機関をつなぐことにあり、
鵬翔サッカーはぴったりのたとえだった。
優勝校をひきあいにだすだけでなく、
サッカーずきをよろこばしながら、
戦術としての鵬翔の特徴をまとめる。
それが相談支援の仕事とおなじエッセンスだとは
うまくできすぎてるみたいだけど、
田畑さんのおはなしのおおくはそんなかんじだ。
いろいろなジャンルに目くばりがきいていて、
サービス精神にあふれている。
「ビフォー&アフター」
「お宝鑑定団」
「朝の連続テレビ小説」
「バルセロナのサグラダファミリア」
など、相談支援に関係ないようなものまで
みごとに引用される名人芸だ。
きのうは山口県で講演があったそうで、
そのときには山口のご当地有名人の金子みすゞをあげるし、
きょうのように島根こられると、
島根についての基本的な情報を適切につかんで講演にいかされる。
田畑さんのたくみな話術は、参加者から島根県民らしからぬ積極性を生みだし、
演習でのグループ発表では自発的に手があがっていた。
これからやってくる社会をどう予測するかで
相談支援もかわってくる。
田畑さんは進化の歴史をたどりながら
「人類は得意分野を活用して生きてきた」といわれる。
そこからみちびきだされたのが、
苦手なことをやらなくても、
得意なことをいかせる社会になればいい、
というかんがえ方だ。
これはなにも夢物語なのではなく、
50年さきの社会を想像してみるだけで
あきらかです、と田畑さんはいわれる。
50年さきの社会では、
車いすなんて不便なものはなくなっているだろうし、
自動車は人間が運転するものではなく、
セットするだけで自動的に目的地へ
つれていってくれるようになっているだろう、
高度な科学技術が不便さをかるくする社会だ。
50年さきの社会から2013年をおもいだすときに、
「むかしは障がい者っていたねー、となってますよ」、
という想像力いっぱいの田畑さんのはなしを
わくわくしながらきいた。
午後におこなわれたグループ演習では、
じっさいにおこなわれる相談支援のながれを
イメージすることができた。
「サービス等利用計画」をたてるまでにも
こまかな支援のつみかさねが必要で、
わたしがすむ町でもこんな相談支援がおこなわれていたら、と
どうしてもうらやましくなってくる。
全体の方向性をおおくの機関が共有し
それぞれの機関がそれぞれの役割をはたしながら、
子どもたちの成長におうじた支援を提供したい。
ロングボールのけりあいは、わたしの美学にあわないのだ。
すばらしい研修だったのでお礼をいいたくなり、
パソコンやプロジェクターをかたづけておられた
田畑さんのところへむかう。
「ありがとうございました」というと、
「がんばってくださいね」と
念をおされてしまった。
田畑さんはさいごまですぐれた講師だった。