2013年04月02日

『解錠師』少年の復活がすくい

『解錠師』(スティーヴ=ハミルトン・ハヤカワ文庫)

評判になっている本なので、どれどれ、というかんじでよんでみた。
たしかにおもしろいけど、こんなにながくする必要があったのだろうか。
とちゅうがなかだるみしていて、
前半のもりあがりをけしているようにかんじた。

2つの時間軸でものがたりが交互にかたられていく。
登場人物がかさなっているし、
2つの時間軸がだんだんちかづいてくるので、
とちゅうで混乱してしまった。
さいごまでよむと、こういうすすめ方をする必要があったことがわかる。
でも、わたしには複雑すぎて、ついていくのが大変だった。
集中力をきらさずに、いっきによむのが
この本をたのしむコツかもしれない。

鍵をあけるテクニックを身につけた少年のものがたりだ。
鍵が複雑になればなるほど、
どれだけそれがデリケートな行為かの、リアリティがすごい。

「まちがいない。ディスクは三枚だ。
反対にまわして、
すべてのディスクを0の位置に合わせる。
そして接触域にもどしていく。
ここからがむずかしい。
不可能に近く、不可能である部分だ」

「不可能に近」いことを少年の指先は可能にする。
ふるい鍵をあけられるようになった少年が、
だんだんとむつかしい鍵にも挑戦し、
まわりにある鍵ならぜんぶあけられるようになったころ、
事件にまきこまれる。
少年はある事件がきっかけとなり、
ことばをはなせなくなった。
ことばがはなせないからこそ、
彼は鍵に意識を集中し、コミュニケーションがとれるようになったのだろう。
しかし、金庫やぶりの名人で、
ことばがはなせないとなると、
少年のちからをかりたがるものはおおい。
はじめは同級生、つぎに無責任な大人、
そしてさいごは犯罪組織が少年の人生を
めちゃくちゃにしていった。
本書は、きずつけられた少年が、
自分の人生をとりもどしていくものがたりだ。
少年はあまりにもとおまわりをしいられてきた。
それでも、しだいに唯一の理解者である女性とこころをかよわせる。
もしそれがなければ、ずいぶんつらい562ページだけど、
とにかくさいごにはたちあがることができた。
それがすくいだ。

posted by カルピス at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする