よくいく本屋さんへ。
村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
が発売されたばかりだ。
うり場には「うりきれのおことわり」がはってあり、
ハルキコーナーがもうけられていた。
今回の新刊は、発売までの秒よみや、
三省堂のフリーペーパーと「村上春樹堂」への改装など、
前作の『1Q84』に輪をかけた「事件」となっている。
本屋大賞を受賞した百田尚樹氏の『海賊とよばれた男』も
特設のコーナーがつくられているものの、
せっかくのおまつりとしての本屋大賞が
『多崎つくる』の発売とかさなってしまい、
直撃をうけたのではないか。
おまつりも、台風にはちあわせてしまうとダメージがおおきい。
本の雑誌社別冊の『本屋大賞2013』と、
『本の雑誌』のバックナンバーがならべられているけれど、
それでも目をひくのはどうしてもハルキまつりのほうだ。
『本の雑誌5月号』の特集は
「やっぱり人情ものが好き!」で、
とくに人情ものに関心のないわたしとしては
どうでもいい企画だ。
でもまあとにかく、とよんでみるかと
これがおもしろかった。
人情小説を時代小説と時代小説の2チームにわけ、
柔道の団体戦方式で先鋒からたたかうというばかばかしさが
『本の雑誌』らしくて好感がもてる。
時代小説チームが次鋒に
宮部みゆきの『桜ほうさら』をだしてくると、
現代小説チームが「宮部みゆきでそれだけ
(人情が)入ってたら勝てないわ」
とあっさり「もうまいりました」というのがおかしい。
現代小説チームの副将としてでてくるのが
重松清の『とんび』で、
「現代の感涙テクニシャンと呼んでもいい
重松清の、言ってみれば最も成功した作品だと思う。
ただ、なんていうかな、悪くいえばあざとい。(中略)
目の前でこう、タマネギを刻むような。
無理やり泣かされてるっていう。
しかも一章に一回は入ってるの、タマネギ剥くシーンが」
という感想がうまい。わたしが重松清にかんじている
「うまいけど、もういい」という気分はこれだったのだ。
というわけで、「あまりにもタマネギ切り刻みすぎ」たため
『とんび』は1勝もしないまま敗退してしまう。
時代小説チームは大将に絶対的なエース、山本周五郎をかつぎだし、
その別格なつよさで優勝するのだった。
直木賞や芥川賞も、おまつりだとわりきって、
これくらいちからをぬいてえらばれたらいいのに。