本棚にあった『ソーシャル・ウェブ入門』
(滑川海彦・技術評論社)をなんとなく手にとる。
まだグーグルという企業の実態が
そんなにはしられていなかった時代に、
ソーシャル・ウェブやブログの本質について
正確に紹介してくれた本だ。
ひさしぶりに本書をめくってみると、
6年まえにこれだけソーシャル・ウェブというあたらしい現象を
わかりやすく説明してくれていたことにおどろかされる。
インターネットが一般的になっていたとはいえ、
そこでなにかあたらしいうごきがおきつつあることを、
この本、そして梅田望夫さんの
『ウェブ進化論』がおしえてくれなければ
わたしにはぜんぜん理解できなかったろう。
そうはいっても出版されたのが2007年と6年まえなので、
さすがに賞味期限がつきかけている。
これにつづく滑川さんの本がよみたくなった。
2007年というと、SNS(ソーシャルネットワークサービス)としては
MySpaceが紹介されており、その他のSNSとして
やっとフェイスブックの名前がでてくる。
ツイッターについての記述はなく、
スマホもまだ一般的でなかった。
ドッグ・イヤーというだけあって、
6年前はひとむかしだけど、
その6年前に本書が存在をおしえてくれたあたらしいうごきが、
いまではIT技術の本流となっている。
『ソーシャル・ウェブ入門』をしったのは、
ほぼ日で糸井重里さんがおしえてくれたからだ。
ほぼ日の座談会で、糸井さんと著者の滑川さん、
そして日経ビジネスオンラインの山中さんが
「ソーシャル・ウェブ」についてはなしている。
糸井 「2.0」まわりの話には、
これでだれが得するのか、という部分が
どうしても見えちゃうんですけど、
この『ソーシャル・ウェブ入門』には、
妙に、それが「ない」。
タイトルに「入門」とありますが、
「入門して、遊ぼう!」としか
読めないんですよね(笑)。
山中 こうすると儲かるぞ、
なんて書いてないわけですね。
滑川 やっぱり
「道具としてのおもしろさ」っていうのが、
いちばん根っこのところにあります。
梅田さんの本でロングテール理論をしると、
ネット販売ではしっぽにあたる商品もこれからはうれていくんだ、
とわたしが興奮していたときに、
滑川さんは
「これからの時代は『2.0』で、ロングテールで、
より民主的な経済構造が‥‥なんて
うたわれていますけれども、本当はぜんぜんちがう。
ますます「集中寡占」が進んでいくんですよ。
とグーグルとアマゾンがネットをしきっていく世界を
予想されていた。
そうしたときに、糸井さんは「オンライン化できないおもしろさ」
について関心をしめし、
「ふだんの暮らしの『具体性』のなかに、可能性がある」
といっている。
ソーシャルウェブというあたらしいうごきをおもしろがりながらも、
それで社会がかわるとはぜんぜんおもっていない。
『ウェブ進化論』のサブタイトルにある
「本当の大変化はこれから始まる」は
じつはまだはじまってないのかもしれない。