5月9日の「シゴタノ!」で、大橋悦夫さんが、
津田綾子さんのかかれた『選客商売』という本を紹介している。
記事のタイトルは、
「不確実な時代で生き残るためには徹底して客を選ぶ」
お客を大切にするのが当然とはいえ、
それではどんなお客のいうことでも
お店はきかないといけないかというと、
もちろんお店のかんがえ方しだいだ。
そして、津田さんはずいぶんつよ気にお客をえらんでいる。
本の表紙には
「買わへんのやったらのぞかんといて!」
というコピーがのっている。
津田さんの本は、「ファンデ」という下着店の商売についてかかれている。
ファンデは世界一やすくうるために、
お客にたいしていくつかの協力をもとめ、
そのルールをまもらないと
「すかさず怒鳴られ、店から追い出され」るという。
(1)段ボール箱での商品展示
(2)狭い店内での買い物
(3)セルフサービス
(4)返品はお断り
(5)レジは一日一回限り
(6)試着はできません
(7)包装はしませんので、購入した下着を入れる袋は用意してきてもらいます。
そして買い物中のお願い。
(8)商品は両手で丁寧に扱い、元通りに畳んで戻す。
「これらを素直に受け入れていただいた方のみ
世界一安いファンデの商品を買うことができる」
「お客様は神様」というかんがえ方があるいっぽうで、
とてもそうはおもえないお客がいることも事実だ。
そんなときに、お店がどういう方針でのぞめばいいかというと、
「買わん客は来んでエエ、行儀の悪い客は店に入れへん」
でいいのだそうだ。
これだけきくと、ずいぶん傲慢な商売におもえるけど、
津田さんのかんがえは、お客もお店も、
みんなが得をする、というものだ。
「『客足が遠のく』という不安もありますが、心配はありません。
売り手市場を作ればいいだけのこと。これは消費者をもうけさせ、
『買わなければ損』という状況を作り出せばいいのです。
『買う側の競争』ならば、お客さんが押し寄せて売り手市場になります」
「すべてのお客さんの要望に応えるように何でもそろえようとすると、
種々雑多で品薄になってしまいます。お客さんには、
『ロクなものがない店』と映ってしまい、足も遠のいてしまう。
だから10人のうち2人は、よそのお客さんと割り切ることが必要なのです」
これはきょねん参加した「webあきんど」でも指摘された。
勇気をもってターゲットをしぼらないと、
いったいなにをうりたい店なのかがぼやけてしまう。
「どんな相手にも対応できるように自分を変えていくのではなく、
相手を限定して、そこに自分を最適化させていくのです」
大橋さんは、『選客商売』にかかれた「格言」をいくつか紹介している。
•店を選ぶのは客の責任、客を選ぶのは店の責任
•正直者が得をすると、店の評判は自然と上がる
•「あんたには売らん」と言い切れる商売をせんとあかん
介護事業ももちろんサービス業なので、
お客にどうえらんでもらうかがとても大切になる。
ただ、そのときに、えらんでもらうだけでなく、
こちらが相手をえらぶ、という視点があるかどうか。
すべての利用者に最適化したサービスをねらうよりも、
自分たちのつよみがどこにあるかをみきわめ、
おたがいに得をする関係をつくったほうが、
お客はしあわせだし、お店の側もたのしい。
ターゲットをしぼる勇気をもちたい。