『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』(2013年・御法川修監督)
34歳のすーちゃん・まいちゃんに、
39歳のさわ子さん。
どまんなかをゆく負け犬作品だ。
キャストはそれぞれ柴咲コウ・真木よう子・寺島しのぶで、
3人ともうつくしく、でありながら3人とも自分の人生にまよっている。
34歳と39歳いう微妙な年齢の設定がきいている。
30代前半ではまだ余裕のある負け犬たちも、
後半になるとまったく別の心理状態になることは、
『負け犬の遠吠え』にくわしい。
そして、40歳というと、子どもをうむためには
タイムリミットともいえる。
男にとって、34歳と39歳の独身女性の気もちは
あまりにも複雑だ。
わたしはすーちゃんのちかくについていたくなった。
あんなにきれいな柴咲コウが、
作品のなかではすごく地味なすーちゃんになりきっている。
質素な部屋にすみ、たのしみは料理をあれこれ工夫すること。
マネージャーの中田さんにおもいをよせ、
いいかんじかも、とおもっていたのに、
彼はすーちゃんの同僚を結婚相手にえらんでしまう。
まいちゃんと写真館で記念撮影をしたかえり、
すーちゃんはまいちゃんとわかれて反対方向にあるいていく。
きゅうに歳をとってほんとのおばさんになってしまったような、
たよりげなあるきかただ。
わたしがそばにいたら、
「あなたはとてもすてきなひとだ」とすーちゃんの丸ごとを肯定し、
だいすきなことをなんどもくりかえしてつたえ、
ぜんぜん心配しなくていいからとだきしめるのに。
カフェのオーナーが、
「なににむいているか、まわりのひとが気づかせてくれる」
といってすーちゃんに店長になることをすすめる。
すーちゃんは、自分が店長にむいているとはおもっていないが、
オーナーはすーちゃんのちからをみとめていた。
すーちゃんは、まよいながら
あたらしい自分に挑戦することにきめる。
店長になったからといって、
なにかがガラッとかわるわけではない。
しかし、そうしたすこしずつの変化が生きるということであると
すーちゃんはわりきれるようになっている。
それにしても、あんなにきれいで、すてきな女性たちなのに、
負け犬であることをなんであんなになやまなくてはならないのか。
適齢期になっても結婚しない生き方もある、という状況は、
そんなにもむつかしいものなのか。
ここで、くしくもきのうのブログにかいた内容を
またきょうもくりかえすことになる。
ここはやはり「突き抜ける」しかないのではないか
(『負け犬の遠吠え』P273)ということだ。
わたしたちはまだ、負け犬という生き方を
自分たちのものにできていない。
つい、これではよくないのでは、と罪の意識をもってしまう。
つまらないことだとおもう。
深刻にならず、もっとかるくとらえられる術を
いいかげん身につけたいものだ。
『負け犬の遠吠え』が出版されてから10年。
負け犬のポジションと、このあたらしい価値観がはたしたやくわりを、
いまいちど肯定的に確認する時期ではないだろうか。