朝日新聞の土曜日版ページに
川上弘美さんが「人には『しょぼ飯欲』がある」
という文をよせている。
川上さんと「しょぼ飯」がふにあいなので、
どんなしょぼさかとたのしみしてよむと、
「トマトを切っただけ」
「わかめとじゃこをまぜてお酢をかけただけ」
というもので、しょぼいというよりシンプルなだけだ。
肉屋さんでかったやすいコロッケに、
ソースをジャブジャブかけて
ご飯のうえにのせてたべる、
みたいな「料理」を期待していたけど、
そういう路線ではないようだ。
FM山陰に『俺達に週末は来るのか』という番組があり、
そのなかで「秘密のレシピ」として
超簡単な料理を紹介している。
「モヤシをいためて◯◯するだけ」という、
ほんのちょっとしたひとひねりで
手をぬきながら見ばえをよくしているのがミソだ。
はじめのころは
ポテトチップスをご飯にふりかけてたべる、
みたいなすごいのがあったけど、
このごろはだいぶ手がかかる「料理」がふえてしまった。
それでも
「ご飯を炊く時にウインナー輪切りにいれて
味の素と醤油で味付け、炊き上がり
容器ごと食べる」
なんて王道をいくすごいのが紹介されるとうれしくなる。
わたしにとっての「しょぼ飯」とは
つまりこういう「料理」だ。
わたしにも立派すぎる「しょぼ飯欲」があり、
料理本をならべた棚には
ほぼ日の『がんばれ自炊くん!』や
小泉武夫氏の『ぶっかけ飯の快感』、
椎名誠氏の『球ねぎフライパン作戦』が
出番をまっている。
わたしがかんがえる「しょぼ飯」の基本はやはり
ぶっかけ飯につきる。
『ぶっかけ飯の快感』のいちばんはじめに紹介されている「猫飯」は、
・缶詰のサバの身を取り出し
・丼にご飯をもり、「腹も」をのせて
のこった汁を全部かける
・醤油をかけ、一度ざっとかき混ぜる
というから、かなりしょぼい。
川上弘美さんにも、ぜひこんな料理にくらいついていただき、
「やっぱりしょぼ飯でないと」とひそかにつぶやいてもらいたい。
わたしがよくお世話になる「しょぼ飯」は
シーナ・マコト氏が考案した
「スパゲッティ・アラ・ショーユ・マヨ」だ。
これはなんのことかというと、
ゆでたてのスパゲッティにカツオブシをかけ、
マヨネーズと醤油をすばやくまぜるというもので、
できあがったらすぐにワシワシたべる。
スピードが勝負の料理でもあり、
時間がたつと残念な味と外見になってしまうから、
気をぬかずに挑戦してほしい。