『あたらしい野宿(上)』(かとうちあき・亜紀書房)
だいすきなかとうさんの本なのでまよわず注文する。
でもすこしやな予感があった。
表紙の絵になじめなかったから。
予感は、あたらずといえどもとおからずだった。
「コッコさん」の片山健さんみたいな作風だけど、
もちろんだいぶちがう。
挿絵として文章にそえられているというより、
絵の存在がおおきすぎて、本のなかみになかなかはいれない。
かとうさんは絵本がつくりたかったのだろうか。
この本は、くよくよしてばかりの「のじゅくくん」(小学4年生)が
野宿に目ざめていく、というかたちをとっている。
のじゅくくんに説明しながら
・野宿とはなにか
・野宿に必要なもの
・おばけがこわくてもだいじょうぶ
・野宿をする場所
・あつくてもなんとかなる
と、野宿についての基本的な知識をおさえる。
で、これがおもしろいかというと、
これまでのかとうさんの本にかかれていたことが、
くりかえされているだけで、かたすかしをくったかんじだ。
あたらしい野宿のたのしさをおしえてくれるわけではない。
なぜこの本ができあがったのか、
だれにむけてかかれたのか、
よくわからなかった。
もっと「かとうちあき」色を全面にだせばいいのに。
これだったら、旅コミ誌の『野宿野郎』のほうが、
まだかとうさんの存在をかんじることができる。
「寒いのもいやだよ」では、
ネコをつかまえて寝袋にいれて暖をとる、
という方法が紹介してある。
・食べ物でおびき寄せ
・首根っこをつかまえる
・寝袋の中に入れる(ネコがヤダヤダといってる絵あり)
のだという。
オチは「ひっかかれて痛い
ノミとダニで、かゆいかゆい」で、
でもじっさいにおとなしく寝袋にはいってくれるネコが
そういるとはおもえない。
おもしろくかこうとしてすべった印象がつよく、
なんだかしらけてしまった。
ほんとにこんなつまらないことを、かとうさんがかいたのか。
ただひとつよかった章は
「段ボール大研究」で、
箱と箱をつなげてなかにはいる方法が紹介されている。
わたしも、子どものころに段ボールと毛布で「家」をつくったとき、
たったこれだけ設備がどれだけあたたかいかにおどろいたことがある。
かんたんに段ボールハウスがつくれるようになれば、
かなりのさむさにも対応できるだろう。
(上)とあるからには、『あたらしい野宿』の
中巻や下巻があるということなのだろうか。
(上)でもう完結してるのだから冗談かもしれない。
続編がでたとしても、この程度の本だったら、
さすがに「まよわず注文」という気にはならない。
かとうさんファンながら、中身をチェックしたうえで、
「もしよければ」にしよう。
(上)の反省からおおきくばけて、
めちゃくちゃおもしろい続編ができればうれしいけど。