2013年09月06日

『上京十年』(益田ミリ・幻冬舎文庫) ブログみたいなエッセイ集

益田ミリの『上京十年』(幻冬舎文庫)をよむ。
映画の『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』がおもしろかったので、
どんなひとなのかしりたくなったのだ。
この本は100編ほどからなるエッセイ集で、
身のまわりのことがサラッとかかれている。
ひとつひとつのはなしがみじかくて、
なんだかブログをよんでるみたいだ。
うまさにおどろくほどではないけれど、
そこらへんのものをサッととりあげて
かんたんに料理してある。
この、サラッと感がすごいといえばすごい。
ブログもこんなふうにかけばいいんだ、
というお手本になるかもしれない。

エステにいった、とか
友だちと食事をしたとかが題材で、
それについてどうかんじたかが、
ごくフツーの感覚でかたられている。
どれだけお金がかかったか、がよくかかれているので、
手のとどかないセレブではなく、
自分たちとおなじ金銭感覚のもちぬしとして、したしみがもてる。
八方美人ではなく、いやなこと、きらいなことが
はっきりかかれているのもいいかんじだ。

これをよむと、題材なんてどこにでもころがっていることがわかる。
要は、材料をなににするかではなく、料理のしかた(みせ方)なのだ。
おなじ境遇にあったとしても、
ほかのひととはすこしちがった角度から益田さんはとらえている。
そのちょっとが、益田さんのうまさなんだけど。
もっとも、有名人だからエッセイでもよんでもらえるわけで、
一般人がブログにエッセイをかいたところで
なにかかんちがいしているとおもわれるだけだろう。
「シゴタノ!」の佐々木正悟さんが、
ブログにテーマがないのはふつうのことだけど、
本にしようとおもったらテーマがいる、
とかかれていた。つまりは、そういうことだ。

この本は「上京してから10年たつ、
36歳の女性がどんなくらしをしているか」
という生活そのものがテーマともいえる。
そうした、どこにでもいるようなひと、
でも無名のひとではなく、わりと有名なイラストレーターの
等身大のくらしは関心がもたれやすい。
くらしている状況じたいがテーマだ。

たとえばわたしが田舎にはいりこんで
晴耕雨読の生活をはじめたとしたら、
中年から農的生活をたのしむオヤジとして
くらしそのものがテーマになる。
田舎ぐらしのなかで、なにをして、なにをたべ、
どんなことをご近所さんとはなしたかに
興味をもつひとがいるのはわかる。

わたしは、これといったテーマをしぼらずに
日記みたいにおもったことをてきとうにかく。
『上京十年』は、身のまわりのことをとりあげるおもしろさに
気づかせてくれた。

posted by カルピス at 10:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする