2013年09月09日

「宮崎駿は、なぜ、はじめて自分の映画に泣いたのか?」(『Cut』渋谷陽一氏によるインタビュー)

「宮崎駿は、
なぜ、はじめて自分の映画に泣いたのか?」(『Cut』)

月刊『Cut』の9月号に、
宮崎駿氏へのインタビューがのっている。
きき手は渋谷陽一氏で、
渋谷氏は、「なぜはじめて自分の映画に泣いたのかという疑問と、
なぜ観客とまったく違うシーンで泣いたのかという疑問、
そのふたつの疑問に対する答えはひとつだ」として
これをインタビューのテーマにすえる。
『腰ぬけ愛国談義』では、半藤一利氏への遠慮からか
おさえた発言がおおかった宮崎氏が、
気のおけない渋谷氏にはおもったことを率直にはなしている。
それをひきだす渋谷氏のうまさがひかる。

「アニメーションなんか、子供時代に
1回観りゃいいぐらいのもんであって。
そんなものを毎日毎日、
繰り返し繰り返しビデオで流してるとかね、
テレビでやったら視聴率が上がりましたなんてのは、
自慢でも誇りでもなんでもなくて。
それはただの人生の消費であってね。
それに加担するということは、
実は、戦争に加担してるのと同じぐらい、
今のくだらない世の中にくだらなさを増してることなんですよ」

「子供たちが喜ぶものとか、ためになるものなら
作ったほうがいいんだ、なんていうのは
この文明の本質をまったく理解してない。
そこらへんのところを問わない人たちが評論を書き、
商売をしてるんですよ。
やっぱり全体で見たら、こんなこと
(スマホをいじる動作)やってるバカも含めてね。
もう終わりですよ!バカ!
自分の脳味噌で考えないで、脳味噌の外側に
なんかがあると思ってるんです」

こんなことを、はじめてのインタビューではなせないだろう。
しかし、渋谷氏との会話では、
これぐらいは当然のこととして共通理解できている。
そして渋谷氏は、宮崎氏が映画のどこでないたかについてきりこむ。

渋谷氏は、堀越二郎がドイツにいった場面で
宮崎氏がないたのではないかとかんがえている。

「僕はあのドイツの場面というのは絶対そうだと思うんですけども。
ここからは、否定されること承知で勝手にしゃべりますが、
なぜドイツの場面で泣くかというと・・・」(渋谷)
と、渋谷氏は自分の推測を宮崎氏にはなす。
渋谷氏の推測はおそらくただしく、
宮崎氏からの反論はない。

この以外でも、3万字におよぶインタビューは、
どこをよんでも宮崎氏のあふれるおもいがつたわってきて
すごくたのしい。

「あの歌(『会議は踊る』の「ただ一度だけ」)
を選ばれた宮崎さんの思いというのは、
時代背景、それから歌詞の内容、全部リアルに伝わりますよね」(渋谷)

「それはまあ、渋谷さんだから通じるんですね。
通じない人は何も通じない。
もうほんとに無教養ですからね!歴史的感覚なし!
何もしらない!『ダメだこいつら』って。
いや、自分のスタッフのことを言ってるんですよ?
ほんとに無知蒙昧。覚悟も教養もない!
なんでしょうねえ、この教養のなさは」

「僕の経験で言うと、会議ばっかりやってるスタッフは
ろくでもないスタッフです。
なんか知らないけどね、設定を決めるのに
10人も集まってごそごそ話してるっていう。
ちゃんちゃらおかしい。
そんなのひとりが描きゃあいいんですよ。
大事なことは鈴木さんとふたりでションベンしながらとか、
3階の隅っこで煙草もらいながら話してますよ。
会議でものごとは決まってない。だから会議はやらない」

別のページには、
宮崎駿氏へのインタビュー集の第2弾が
今秋発売されるというおしらせがのっている。
一冊目の『風の帰る場所』から13年。
インタビューはもちろん(たぶん)渋谷陽一氏なので
すごくたのしみだ。

posted by カルピス at 09:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 宮ア駿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする