2014年05月02日

『プラダを着た悪魔』アン=ハサウェイの魅力につきる

『プラダを着た悪魔』(デビッド=フランケル監督・アメリカ)

ファッション業界という、わたしにはぜんぜん関心のない世界のできごと。
でも、とてもおもしろくみれた。
ファッション界の最先端は、ああいうことになってるのか
(一部のカリスマがとりしきる世界。
ファッションというものへの信念。など)。

主人公のアンドレア(アン=ハサウェイ)は、
編集長のアシスタントとして雑誌『ランウェイ』に採用される。
『ランウェイ』はおおくの女性があこがれる最先端のファッション雑誌であり、
編集長のミランダ(メリル=ストリープ)は
ファッション業界にはかりしれない影響力をもつ。
「プラダを着た悪魔」とは、『ランウェイ』に君臨し、
スタッフに無理難題をおしつけてプレッシャーをかけるミランダのことだ。

冒頭で、アンドレアがベーグルオニオンをたべながら
あるいて会社へむかうシーンがある。
ファッションの映画だけあって、
さすがにかっこいい服装だ、と感心していたら、
そこはまだアンドレアがファッション業界にはいるまえで、
ぜんぜんいけてないさえない女の子、という設定の場面だった。
あんなにかわいくて、きている服もいかしてみえるのに、
ふとっているとか おばあさんからのおさがりの服、
なんて同僚にあいてにされない。

それにしても、ファッションに目覚めた女性は大変だ。
わたしには、彼女たちのきている服がどれだけ価値のあるものなのかわからない。
アンドレアが、おもいたってブランドもので身をかためたときは、
たしかにすごく魅力的になっていた。
でも、だれもがそうみごとに変身できるわけではない。

すべての女性がファッションに目をこらしているかというと、そうでもなく、
わたしのまわりには雑誌『STORY』の存在すらしらないひともいる。
ファッションについてはとくに両極化がはげしいのだろう。
関心のあるひとはとことんつっこんでいくし、
ないひとはユニクロで満足する。
バブル世代とちがい、このごろのわかものは、
ファッションにあまり価値をおかないそうなので、
とくにそうした傾向がつよいかもしれない。
わたしもまた典型的なファッション音痴で、
プラダもルイヴィトンもシャネルも、なにがなんやらわからない。
それでもこの作品はおもしろくみれたから、
よほどうまくつくってあるのだろう。

ひとりのわかい女性が夢をおいかけて・・・というストーリーで、
とびこんだのは自分のおもっていたのとはちがう世界だったけど、
ただまけたくないというおもいで仕事をつづけようとする。
もともとあたまのいいひとでもあるし、ファッションのセンスにもめざめてきて
だんだんと仕事のおもしろさにひかれていく。
そこにいたるがんばりと、生まれかわっていく彼女のうつくしさに
みるものはつい応援したくなってくる。
なんといっても、アン=ハサウェイの笑顔はとびきり魅力的なのだ。

メリル=ストリープがえんじるミランダみたいなタイプは、
みんなで気もちよく仕事をする、ということをかんがえないのだろうか。
たのしく仕事、という意識では、いい雑誌ができないのか。
質問しては駄目とか、いつもあついコーヒーを、とか
どうでもいいようなことをもとめてスタッフをこまらせる。
ピリッと緊張感をもつのはわかるけど、
あんな態度を上司や同僚にとられたら、わたしだったらぜったいにやっていけない。
ミランダは会社につくと、机のうえにコートやカバンやらをほうりなげる。
そうやって、ひとを不愉快にしてなんの意味があるのだ。

「あなたはファッションセンスもないし」とアンドレアにいい、
「それはひとによって見解が」と彼女が説明しようとすると、
「いまのは質問じゃないの」と両手をふっておいはらう。
「That's all」とひくい声でささやくミランダのこわさ。
これが『アウト・オブ・アフリカ』でアフリカ人の生活をまもろうと、
提督のまえにひざまづいたあの女性とおなじひとなのか。

アンドレアはせっかく手にしたアシスタントの地位をなげだして、
恋人のもとにかえる。
会社をやめたあと、町で偶然ミランダをみかけたときのアンドレアがすてきだった。
道をはさんでミランダのほうににっこりほほえむ。手までふってみる。
でも、ミランダは表情をかえず、メガネに手をあてただけで車にのりこむ。
あいかわらずだわ、あのひと、というように、
アンドレアはもういちどにっこりほほえみ、目をとじて、
カバンをもっている指をかるくうごかす。
そしてクスっとわらってからあるきだす。
じつは、ミランダは車にのりこんでからほんのすこしほほえんでいた。
メリル=ストリープならではの演技に、
それまでの傲慢さを ゆるしてしまいそうになる。

ファッションについてなにもしらなくても
さいごまでたのしめたのは、アン=ハサウェイの魅力につきる。
ファッションにくわしいひとの解説をえて、
もういちどみたい作品だ。

posted by カルピス at 20:02 | Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする