『家族の悪知恵』(西原理恵子・文春新書)
『生きる悪知恵』につづく西原さんの人生相談本だ。
2冊めとなると、わたしもだいぶなれてきて、
西原さんの回答にあまりおどろかなくなる。
印象にのこったのが、
「過保護な母に干渉されて
弟がどうしようもない状態に・・・」という相談だ。
ほかの兄弟にはそうでもないのに、
下の弟にだけはすごくあまいお母さんなのだそうで、
40歳になるいまも専門学校へいかせ、経済的な援助をつづけているケースだ。
西原さんのアドバイスは、
「もうその難破船は捨ててください。(中略)
そこで非常に大事なのは、
弟とお母さんが沈みかかっても、助けに行かないこと。
絶対、手を差し伸べてはいけません」だ。
さすがに西原さんはよくわかっている。
わたしの家でもにたような問題をかかえていたことがあり、
わたしの両親は手をさしのべてしまった。
しりぬぐいをかさねているうちに、
どんどん援助額がふえてゆき、相手は調子のいいことをいうけれど、
ぜったいにそのお金はかえってこない。
肉親間でこういう問題がおきると、
わたしの家の場合、親戚が無責任に「兄弟だから」
あんたのところがたすけるのは当然、みたいなことをいってきて、
両親はそのいいなりになっていた。
お金をだすと、援助される側はいつまでもそのお金をあてにして、
自分で責任をとろうとしないことをわたしは学習した。
家族だから、兄弟だから、親だから、
きりすてるわけにいかないという価値観がいまもまもられていて、
ひどい人間におもわれたくないという心理になりやすい。
まわりもそんな倫理観をふりまわしてかってなことをいう。
西原さんは、そこらへんをみごとにきってすてる。
「ももクロにはまって家庭をかえりみないダンナ」については
「ダンナは川に流しましょう」だ。
結婚したからといって、子どもを不幸にするような父親なら
西原さんはためらわず「川に流」す。
まえの本のときにもかいたけれど、
http://parupisupipi.seesaa.net/article/391062543.html?1401665312
この判断は、優先順位がちゃんときまっているからできることだ。
子どもがいる場合、まずは子どもたちをおちついた環境でそだてること。
それをじゃまするようなダンナとはいっしょにくらさなくてもいいし、
子どもには父親が必要、なんて一般論にしばられることはない。
よんでいるうちに、配偶者はわたしにどんな問題をみとめているのか
気になってきた。
わるい父親ではないとおもうけど、
よい配偶者である自信はない。
結婚して20年ちかくたてば
いつまでも はじめのころとおなじというわけには
いかないのだ。ま、いいかそんなこと。
前作につづいて、この本もみごとな実用書で、
ここにある西原流処世術を応用して すくわれる読者はおおいだろう。
それにしても、いろんな問題があるものだ。
なかにはどうでもいいような相談もあるけど、
相談しているひとはどこにポイントをあてればいいのか
わからないからこまっているのであり、そういうときに
西原さんは非常に有能な回答者だ。
「ダンナは川に流しましょう」なんて、
そうだれにでもいえることではない。
だれがあまえていて、本分をつくしていないのかを
西原さんはすぐにかぎつけて、適切に対処する。
あまえについて、西原さんはすごくきびしいのだ。
人生の基本的な方向性を、この一冊をとおしてよめば
ザッとつかめるようになっているから、
税こみ864円はとてもお得なかいものであることを強調したい
(5月20日に第1刷が発行され、
30日にすぐ2刷がかかっているので
読者にも歓迎されているようだ)。