「デイリーポータルZ」の特別企画
「勝手に食べ放題」に意表をつかれた。
http://portal.nifty.com/2009/12/29/a/index.htm
どんな企画かというと、
「食べ放題3000円!」なんてお店にかいてあると
ついこころがさわいでしまいがちだけど、
じっさいはそんなにたべれないのではないか、
客のほうで自主的に「食べ放題」をしたら
ほんとうはいくらくらいかかるのかを、
いろんなお店でしらべようというものだ。
こうかくと、ごくあたりまえの調査におもえる。
しかし、こうやって「勝手に」たべ放題をしてみると、
これまでみすごしてきた意外な盲点が
くっきりうきあがってくることに気づく。
じつは、いまの日本において、
その気になれば、わたしたちは
どのお店でも「勝手に」たべ放題ができる。
そして、その値段は「食べ放題」の設定とそんなにちがわない。
お店の意図とは関係なく、客が「勝手に」たべ放題すれば、
いつでも・どこでも、すべてのお店がたべ放題なのだ。
ひとつおさえてあるのは、「30才以上を対象にした記事です」
と、あらかじめ「おことわり」されていることだ。
20代の体育会系と、食がほそくなりつつある中・高年者とを
たしかにいっしょにはできない。
調査の対象となったのは「ビッグボーイ」「ケンタッキー」「サイゼリア」
などの「いかにも」というお店だけでなく、
「ローソン」「富士そば」など、
たべ放題をイメージしたことのないお店をふくむ11店だ。
コンビニでたべ放題なんて、やりたいような、やりたくないような。
かわりどころとしては「ポッポ」という
イトーヨーカドーにあるスナックコーナー(やきそば・たこやきなど)と
「ヴィドフランス」というパン屋さんで、
ふつうこういうお店で「たべ放題」はやらない。
調査の結果は、「デイリーポータルZ」が予測していたとおりといえるだろう。
30をすぎた「ふつう」の人間は、
どんなにがんばっても、そんなにたべられるものではない。
たべ放題は、日本だけの企画なのだろうか。
設定された料金内なら、いくらでもたべられることはクールなのか。
ぱっとおもいついたインドでは、
おなかいっぱいたべるのがあたりまえであり、
お皿にのったごはんやカレーがすくなくなると、
お店のひとがどんどん追加してくれる。
すくない量できりあげるのがむつかしいほど、
お店側は客にしっかりたべさせようとする。
「たべ放題」なんていわなくても、お店はじめから
たべ放題を前提に料理を提供しているのだ。
タイはどうか。
いちにち3食に限定せず、すくない量をなんどもたべるのが
タイのやり方だから、
いちどの食事で満腹を目ざそうとは だれもしないのではないか。
インドネシアのメダン料理は、お皿にのった料理を
客が「勝手に」とって、あとで精算というシステムが有名で、
これもかたちをかえた「たべ放題」とはいえるかもしれないけど、
料金内で限界にいどむというかんがえ方ではない。
おおくの国には「たべ放題」という発想がなく、
「3000円でたべ放題!」がなぜ魅力的なのか、
基本的なところで理解されないような気がする。
料金内でたくさんたべたらお得、という設定と、
食事にもとめる価値がかみあわない。
「たべ放題」は、きわめて日本的な文化かもしれない。