お盆に姉の家族が東京からやってきた。
自動車の免許をとりたての甥が、いま車にのりたくてしかたがないそうで、
広島でレンタカーをかり、彼の運転で島根までやってきたのだ。
むすこはその甥とまえから仲がよく、
夏やすみちゅうに東京へ あそびにいくはなしがまとまったようだ。
むすこにとってはじめてのひとり旅であり、はじめての東京だ。
高校2年生なのだから、東京くらいひとりでいけたほうがいいし、
いけばいい経験になるだろう。
むこうにつけば大学生のいとこがいるのだから、
親としてもそう心配ではない。
で、きのうの朝はやく、むすこは電車にのってでかけていった。
東京で3泊し、火曜日にかえってくる予定だ。
あとにのこるのは、わたしと配偶者、それにわたしの母親の3人となる。
むすこが高校を卒業したら、この3人だけでずっとすごすことになるのだ。
将来の日常を、すこしはやめに体験する機会となった。
いつもはむすこがいるから夕ごはんをいっしょにたべているし、
いまは夏やすみなのでわたしが彼のひるごはんをつくっている。
むすこがいなければ、食事だけをとっても
ずいぶんちがう「家族」のありかたにかわりそうだ。
配偶者はほとんどおしゃべりをしないひとなので、
夕ごはんの時間をどうやりすごせばいいか、わたしは心配になる。
さいわい(「さいわい」はひどいだろうと、自分でつっこむ)
むすこの不在ちゅう、配偶者は実家にかえってくるといい、
しずかすぎる夕ごはんは回避されることとなった。
しかし、はやければ2年さきに むすこがいない生活になるわけで、
ほんの3日間、コミュニケーションを心配すればいいのとはわけがちがう。
子どもがおおきくなると、おおくの家庭が 夫婦だけになる「問題」に
とまどうことになるのだろう。
子ばなれや親ばなれについては うまくやれているとおもっていたのに、
突然やってきた「夫婦だけ」という状況が、
これだけプレッシャーとはしらなかった。
むすこと仲のいいわたしの甥は、
来年からフィリピンへ語学留学にゆき、
そのあとはオーストラリアでのワーキングホリデーを計画しているそうだ。
将来のことなんか、これまでまったくかんがえていないようにみえたのに、
きゅうにしっかりしたことをいいだすので、おどろいてしまった。
大学生となれば、それなりに自分の将来をおもいなやむみたいだ。
むすこにも、はやく自立して家をでるようもとめている。
高校をでてすぐに就職してもいいし、
もうしばらく時間をかけてもいいけれど、
いつまでも家にいられるなんておもってほしくない。
なにもしないで家でブラブラはおことわりだ。
むすこの東京ゆきで、いまの家族形態が
あともうすこししかつづかない現実を つきつけられる。
よくいわれるように、子そだて期間より、
子どもがすだってからのほうが のこされた時間はながいわけで、
そこからはまたべつの形で家族をつづけることになる。
わたしたち夫婦もいいかげん歳をとってきたし、
それぞれの親も高齢だ。
健康しだいで くらしかたがまったくちがってくるだろう。
わが家はこれからつぎの段階に、いやおうなくすすんでいくのだ。
むすこの東京ゆきは、これがあたらしい段階へのはじまりであることをしらせてくれた。