2013年の『おすすめ文庫王国』をよんでいたら、
出版社の順位づけをきめる座談会で
角川文庫が1位におされていた
(ちなみに、つぎの年にはガクッと評価をさげて4位におちている)。
B「うちのお店だとベスト200に入ってる点数でいうと
今年ついに角川文庫が1位になったんですよね。
D「えーっ!」
B「2位が新潮文庫で、3位が講談社文庫なんですけど
角川文庫は断トツ」
A「メディアワークス文庫の<ビブリア古書堂の事件手帖>も入れないで?」
B「入れない。米澤穂信の『氷菓』のシリーズや
有川浩もあるでしょう」
本のいちばんさいごには、
ジュンク堂池袋本店と丸善お茶の水店の文庫担当者による
はなしあいがのっている。
それぞれのお店のベスト100にはいった数をみると、
ジュンク堂は角川22・新潮22・早川12にたいし、
丸善は角川11・新潮17となっていた。
本屋さんによるうれすじのちがいがあるとはいえ、
角川文庫のつよさは共通している。
そんなに角川文庫がうれてるのなら、と
そのベスト100のうち、わたしがよんだことのある角川文庫をかぞえてみると、
ジュンク堂・丸善の両方のリストとも、1冊もなかった。
たまたまこの年がそうだったわけではなく、
角川文庫でよくうれているという米澤穂信・有川浩・松岡圭祐を
わたしはこれまでいちどもよんでいないから 当然の結果ともいえる
(有川浩は『キケン』を挫折した)。
わたしの本棚をみても 角川文庫の本はあまり目につかないし、
かったけどまだよんでないとか、
よんでみたけどとちゅうでやめたとか、
よみおえたけどおもしろくなかったとか、
角川文庫の本をおっかけてみると、
わたしとの相性がさんざんなことに気づいた。
べつに角川春樹氏がきらいだとか、
角川文庫にネガティブなイメージをもっているわけではないのに、
結果として あきらかに角川文庫をよんでいない。
かんがえてみれば、出版社によって
どんな本をだすのかという特徴が当然あるだろうから、
わたしの読書歴に角川文庫の本がわずかしかはいっていないのは、
ひとつの傾向としてありえる結果だろう。
わたしがすきな作家は、あまり角川書店から本をだしていないともいえる。
ベテランの書店員なら当然しっているような出版社べつの特徴を
わたしはまったくしらなかったことがわかり、
ウィキペディアをのぞいてみる気になった。
でも、該当ページにたどりつくまでに、
ネットにはものすごい質問が平気でのっているのをしり、おどろいてしまった。
ズーズーしいというか、それくらい自分でかんがえろというか。
「出版社べつの文庫の特徴をおしえてください」みたいな
質問もちゃんとあり、あんまり参考になりそうにない回答がよせられている。
わたしがしてるのも、本質的におなじおろかな行為なのがあきらかで、
そんなことをする自分がいやなかんじだ。
角川文庫との相性のわるさがわかっただけでよしとして、
これ以上ふかいりするのはやめた。
それにしてもすごい質問がたくさんある。
「村上春樹さんの小説は『文学』ですか?
『風の歌を聴け』のみを僕は読んだことがあります。
この小説で『文学』な部分を教えてほしいです」
いまネットの検索は、こんなことにつかわれているのか。
たずねるほうもたずねるほうだけど、
こたえるほうもかなりずっこけている。
「もちろん冗談です」と、どこかにかいてあればいいけど。