『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』
(ジェーン=スー・ポプラ社)
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』につづき、
2冊目となるジェーン=スーさんの本だ。
出版はこちらのほうがさきで、テイストはだいたいいっしょ。
未婚のプロとしての発言だ。
「はじめに」で、はっきりとこう おことわりしてある。
「この本は結婚できるようになるハウツー本ではございません。
どちらかと言えば、『ここに書いてあることをやり続けていると
私たちのような未婚のプロになるぞ!』という警告書です」
「この本は、結婚を奨励しているわけでも、
結婚してない方を筆者未婚のまま責めているわけでもありません。
101の理由を読んで、ご自身に思い当たるフシがあるならば、
反面教師にしていただくもよし、
独身をとことん楽しんでやると腹を括っていただくもよし。
未婚のプロ予備軍の方々に、笑って楽しんで頂けたら本望です」
101の理由は、ジェーン=スーさんが
未婚友だちとファミレスでもりあがっていたときに、
誰かが「プロポーズされない理由を考えて、ここで書き出してみよう!」
といいだしたのがきっかけという。
「さんざん盛り上がった小一時間、
『私たちがプロポーズされない理由』リストは
優に100を超えていました。
そのリストをみんなで回し見しながら
『こりゃ〜できるわけがない!』とゲラゲラ笑って
フゥーとおおきくため息をついた夜。
あの虚無感はなかなかのものでした・・・。」
この本のコンセプトは、
「さぁ、世界一役に立たない結婚指南書である本書を手に、
あなたも私たちと一緒に独身チキンレースに参加しませんか?」だ。
ひとつの理由もみおとさないよう、目次からていねいによんでいく。
・彼が連れて行ってくれるレストランで、
必ず空調や店員の態度にケチをつける。
・彼の方が稼ぎが少ないことをあなたはなんとも思っていないが、
買い物に行くとあなただけ大人買いをする。
・彼を、元彼と比べて寸評したことがある。
・女子力が高まりすぎている。
それぞれの項目に、具体的な解説がそえてある。
「女が『プロポーズ、OKするから大丈夫だよ!』と、
キャッチャーミットをわかりやすく出しておかないと、
球がミットに収まることはない」(039)
「彼氏が身を置いている環境の常識=彼氏の常識です」(047)
ゆたかな失敗の経験がいかされた珠玉のアドバイス集というべきか。
101も理由があるときけば、
わたしなんかがよく結婚できたものだと幸運に感謝したくなるけど、
これらは女性にとっておもいあたる理由であり、
男のわたしが なにかをあらためなければならないのではない。
あーよかった、と、おもわせておいて、じつは手ばなしで安心できない。
そんなめんどくさい男なら、無理してプロポーズをもとめなくても、
という本音がみえかくれしているからで、
「(それぐらいで)いちいち不機嫌になるような男だったら、
次行きましょう、次!」
というのが本書の基本方針なのだ。
そして、よんでいるうちに どの項目もさほど胸にとどかないことに気づく。
理由なんていくらでもつくれるから、
それが理由だとおもえば それが理由になるのだ。
ここにあげてある項目が原因というより、
「あとがきにかえて」にあるように、けっきょくは
「自分が大好きで、自分が大切で、
人生の舵はなにがなんでも、自分で取りたい」からだろう。
ことばのあそびをたのしむ本であり、
あーおもしろかった、でとどめたほうがいい。
あんまり本気でつきあうと、肩すかしをくう。
101のリストのあとに、
「楽しすぎる独身生活を手放せない私が、
嫁にいけないその他3つの理由」という
べつだての章がもうけられている。
1 「男のプライド」問題
2 「男の特性わからん」問題
3 「結婚、二の次」問題
など、101の理由をさらに10のカテゴリーに分類し、分析される。
きれいに分類されて 問題を整理できるかと期待していると、
すっきりしてるのは本人だけで、
わたしは なんどくりかえしよんでも 意味がわからなかった。
この章がなければ、101も理由があってたいへんだったねー、ですむし、
さいごの「あとがきにかえて」がきれいなまとめになっているのに、
このべつだての章がわたしには意味不明だった。
気がるなエッセイかとおもってたら、
きゅうにフェミニズムの視線から分析がはいったようなかんじ。
よくかんがえてみると、
男のわたしがこの本をよむ理由はなんだろう。
女性の側からみた101の理由であっても、
男のほうがしっていてわるいわけではないので、
もしかしてあるかもしれない 2どめのプロポーズにいかせるかもしれない。
とはいえ、わたしもまた101くらいはプロポーズできない理由がありそうなので、
本書が結婚の指南書にならないのとおなじくらい
わたしの2どめもわずかな可能性しかないだろう。
とちゅうまでおもしろくよんでいたのに、
さいごになって理解できないかったのは残念だった。
わたしはジェーン=スーさんがいっていることを、
ほんとうはぜんぜんわかっていないような気がして ひっかかっている。