2015年02月15日

『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』(長谷川三郎 監督)

『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』
(2012年・長谷川三郎 監督)

『ニッポンの嘘』上映会にでかける。100席ほどの会場が満員となる。
福島菊次郎氏について、わたしはなにもしらなかった。
報道写真家として広島・三里塚闘争・日本の兵器産業の実態など、
権力がかくそうとする事実を とりつづけてこられた。
そして90歳をこえたいまもなお、現役のカメラマンだという。
とくにカメラをかまえると キビキビしたすばやい身のこなしで、とても90歳のうごきとはおもえない。
あまりシワがないせいか、わかくみえる。肌にツヤがある。
といって、何歳にみえるかというと・・・何歳だろう?
表情はすごくおだかやかだけど、
写真を説明することばのはしばしから
権力にくっしないつよい精神がつたわってくる。

福島さんが反権力の側にたつのは、
広島の被爆者を取材したことがスタートになっている。
原爆がおとされた当初から、被爆者は差別されていた。
必要な治療をうけられずに、くるしみながらなくなったひとたち。
そして、広島は原爆をおとされたと 被害者意識でうったえるけど、
その広島が、朝鮮の人にたいしては 差別する側にまわっている。
福島原発事故でも、おなじことがくりかえされた。
被爆者は差別され、権力側は責任をとらない。

福島さんは、そうした権力側の「嘘」をずっと告発しつづけてきた。
反権力の側にたつと、日本でも命の危険にさらされる。
兵器産業の写真を発表後、福島さんは暴漢におそわれて大ケガをする。
家も放火され、すむ場所をうしなった。
くさったやつといっしょにいたら、こっちもくさってくると、
無人島での自給自足の生活をはじめる。
いっしょにくらしていた女性が、
「あと7万円しかない、生活保護をうけよう」というと、
「この国を攻撃しながら、この国から保護をうけられるか」と
おいだしてしまう。

こんなひとが日本にいたのだ。
このひとはほんものだ。
自分のいのちをかけて事実をつたえようとする。
なぜわたしは、これまで福島さんの仕事をしらなかったのか。
ほかのお客さんたちも、映画をみているうちに 福島さんの迫力に圧倒されたようで、会場に一体感がうまれていた。

上映がおわると、この作品を監督された長谷川三郎氏が
どうして福島さんを取材しようとおもったのかをはなし、
そのあと質疑応答となった。
反骨の報道写真家、という噂から、
長谷川監督はビビりながら福島さんをたずね、
はなしをきくうちに、いっぺんで福島さんの魅力にはまったのだという。
福島さんを映画にすることは、
自分もまた反権力の側にたつ覚悟が必要で、
けしてかんたんな取材・撮影ではない。
自分はこわがりなので、と長谷川監督は わらっておられたけど、
はなしのおさえ方から、きちんと筋をとおそうとする誠実なひとがらがつたわってくる。
このひとだからこそ、こうした迫力のある作品となったのだ。
長谷川監督は、福島さんといっしょにすごすことで、

「自分のまわりでたたかっているひとをとりあげていきたい。
 自分もそういう(たたかう)ひとになりたい」

とおもうようになったという。
この作品をみて、わたしもまた、そうありたいとおもった。

福島さんはこの3月で94歳になられる。
目がよくみえなくなり、足もよわってきているという。
ただ、安部首相の「活躍」にエネルギーをかきたてられているので、
長谷川監によると、「まだしばらくは大丈夫」らしい。

posted by カルピス at 23:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする