2015年03月03日

介護報酬のひきさげが、インセンティブとしてどうはたらくか

今朝の朝日新聞に、来年度からの介護報酬のひきさげで
現場である事業所や利用者がなにをかんじているか、という記事がのった。
事業所側の意見として、
「消費税を8%に上げたのは社会保障の充実が目的だったはずなのに」
と法人幹部がコメントしている。
また、今回の変更では介護度のおもい人へのサービスが手あつくなるそうで、
「事業所が介護度の重い人ばかりを優先し、
 軽い人が見捨てられるのでは」(NPO事務局長)
と心配する声も紹介されている。

ここらへんのかけひきというか、
政府のねらいと、事業者側の対応、利用者の反応などをみていると、
いまよみかけている『ヤバい経済学』
(スティーヴン=D=レヴィット・スティーヴン=J=ダブナー)の
「インセンティブ」とはこのことかとおもった。
ウィキペディアによると、インセンティブとは
「人々の意思決定や行動を変化させるような要因」
なのだそうで、『ヤバい経済学』では「誘引」となっている。
それは、お金かもしれないし、道徳心にうったえることかもしれないし、
ひとから評価されたいという社会的な欲求かもしれない。
『ヤバい経済学』では、子どもをむかえにくるのがおくれる保護者にたいし、
罰金制度をとりいれた保育園が例にあげられている。
「罰金制度が始まると、親の遅刻はすぐに・・・増えた」のだそうだ。
お金をはらえば遅刻していいなら、
そっちのほうが気がらくだ、と保護者はうけとめたわけで、
保育園側のもくろみどおりにインセンティブがはたらかなかった。
だったら罰金をもっとたかくしたらいいかというと、そうでもないだろうし、
かといって罰金制度をやめても 遅刻者数はもとにもどらなかったという。
インセンティブがどうはたらくのかはすごくむつかしく、興味ぶかい。

政府は介護保険がうまくまわるために、
効果的なインセンティブとなるよう議論をつくしたことだろう。
介護報酬をへらせば事業所は文句をいうだろうけど、
いまのままでは放漫経営の事業所でも生きのびてしまうから、
すこしぐらい報酬をへらしても大丈夫ではないか。
利用者からすると、1割負担がへるのはありがたいけど、
事業所の経営がいきづまるとサービスがわるくなるのが心配だし、
家族からしても、事業所がつぶれてしまっては
親をみてくれるひとがいなくなるとこまってしまう。
いまだけでなく、将来にまでわたって安定した介護サービスを定着させる。
今回の改正は、そうした調整をねらっているはずだ。

国がかんがえたとおりに事業所や利用者がうごくとはかぎらない。
事業所がやる気をうしなえば、こまるのは利用者と家族だ。
いま国が道をあやまると、長期的におおくのひとがたいへんな目にあう。
インセンティブという視点から今回の介護報酬きりさげに注目したい。

posted by カルピス at 21:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 介護 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする