「web本の雑誌」にのった荻原魚雷さんの記事
「フライパンがあれば何でもできる」がおもしろかった。
http://www.webdoku.jp/column/gyorai/2015/0512_120045.html
荻原さんによれば、ふたつきのフライパンがあると
なんでもつくれてしまうのだという。
お米がたけるしメンもゆでられる。
カレーだってすぐできるし、
あまったらごはんをいれてカレーチャーハンにする、
なんていわれると こころがうごく。
鍋よりもまずフランスパン、という指摘に説得力があり、新鮮だ。
「人生観が変わるとおもう」とまでかかれている。
この記事を、はじめわたしは「フランスパンがあれば何でもできる」と
まちがえてよんでいた。
それはそれで、意味がつうじる。
フライパンは最強のパンであり、究極的にはフライパンさえあれば
ほかのパンがなくてもこまらない。
パンを機能の面からみると
・パンそれ自体をたべる
・ほかのおかずをのせてたべる
・パンでお皿をふく
という3つにしぼられ、
そのどれもにフライパンは役にたつ。
パンだけをたべるときに、食パンではくるしいけど、
フランスパンはあんがい平気だ。
かたさがあるので、おかずをのせても大丈夫だし、
お腹をひらいてなにかをはさめば それだけでサンドイッチになる。
チャパティやトルティーヤがなくても
フランスパンがかわりの役をはたせるけど、
ほかのパンにそれだけの柔軟性はない。
とくに、サンドイッチの材料として フランスパンはすぐれている。
なんでもはさめるし、こぼれにくく、たべやすい。
食パンのサンドイッチは、バターをぬったり耳をきったりと
あんがいめんどくさいのにくらべ、
フランスパンをつかえば ただはさむだけですむ。
かたさがあるので、お弁当にするのにも なにか紙でつつむだけでいい。
食パンでつくるサンドイッチに こんなまねはできない。
意外なところでは、ワインのつまみとしてのフランスパンがみのがせない。
パンがつまみ、というのはなんだかへんなかんじだけど、たしかにピッタリなのだ。
このことは、椎名誠さんがつくる雑誌『飲んだビールが5万本』におさめられている座談会でしった。
チーズとかハム、それにこじゃれた料理よりも
フランスパンこそが ワインにあういちばんのつまみ、という指摘はするどい。
鴻上尚史さんの『クール・ジャパン!?』(講談社現代新書)に、
フランス人女性がいった
「日本は美味しいフランスパンがあるフランス以外の唯一の国だと思うわ」
という発言が紹介されている。
日本のパンは、外国人にあんがい評価がたかいのだそうだ。
東京にはレベルのたかいパン屋さんがおおいのかもしれないけど、
わたしの町でしっかりしたフランスパンをみつけるのは かんたんではない。
へんにやわらかかったり、単純においしくなかったりで、
パンづくりとしての方向が まちがっているかんじだ。
ほかの国についていうと、むかしフランスの植民地だったことから、
ベトナム・ラオス・カンボジアのフランスパンがおいしいと、
ガイドブックにかならずといっていいほど とりあげられている。
これはもう完全にイメージがさきにたった ステレオタイプな意見であり、
わたしはこれら3つの国でフランスパンをたべてみたけど、
いずれもそんなにおいしくなかった。
3つの国とも、基本的にサンドイッチとしてたべるので、
パン自体のおいしさを あまりもとめていないようにおもった。
おいしいフランスパンは完璧なパンとして 何でもできるけど、
おいしくないフランスパンは かなりこまったパンになってしまう。