2015年06月11日

『会社でビリのサラリーマンが1年でエリートになれるかもしれない話』(林雄司)

『会社でビリのサラリーマンが1年でエリートになれるかもしれない話』
(林雄司・扶桑社文庫)

お気楽なタイトルだけど、ほんとはとてもしっかりした内容だ。
「デイリーポータルZ」がどのようにはじまり、
つづけるためにどんなことをこころがけているか。
帯には
「ビジネス書としても少し役に立ちますが
どちらかというと脱力系のお笑い本です」
とあるけど、反対だとおもう。
脱力系にみえて、本質はりっぱなビジネス書だ。
4章にわたる77のメソッドで
林さんのこころがけるポイントがしめしてある。

・努力を禁止する
・アイデアは降りてこないことを自覚する
・興奮を大事にする
・PVは無視してもいい

アイデアあつめやネット上での処世術など、
ブログにも共通する点がおおく、仕事のすすめ方において参考になる。
わたしはこの本をよみおえてすごくすっきりしたし、気がらくになった。
「デイリーポータルZ」と「シゴタノ!」は、
そんなにとおくはなれていないのかもしれない。

ほかにも
・ツイッターに不満を書かない
・書きたいことを書くと外しても恥ずかしくない
・サビはいちばん前に持ってくる
・面白さのキーワードは「近さ」
・知識でおびきよせてエピソードで引きずり込む
・続けるためにやめない

など、ブログをかいているひとは
ピクッとくるのではないか。
林さんは、SEO対策なんてまったくかんがえてない。
ライターがおもしろいとおもってかいた記事を、アップしようとするだけだ。

この本をひらくと[巻頭付録]として
「ビジネスに役立つ!厳選記事集」がのっている。
パワーポイントでつくるプレゼンを、
仕事ではなく、どうでもいいことにつかった例だ。
たとえば
「ある日の昼食にサバを食べたこと」という どうでもいいはなしが、
パワポで「決定までの意思決定プロセス」の図として説明されると
ものすごくもっともらしい。
サバをたべながらも、やっぱり肉にすればよかったなー、と後悔したら、
つぎの昼食ではなにをたべるかが「昼食における循環モデル」の図となる。
失敗しないで注文するためには「昼食時における5つのS」があれば安心だ。
たかだか昼食にサバをたべただけのことなのに、
こんなにそれらしい資料としてしめされると、
もしかしてわたしが仕事でつかう資料も、
ほんとうはこれくらい中身のないものでは、とおもえてくる。
これは仕事なんだと、もっともらしい顔をしているだけで、
仕事も昼食のサバも、実はにたようなものなのだ。
こうした本気であそぶかるさが、
「デイリーポータルZ」の魅力になっている。

さきほどあげたメソッドの
「続けるためにやめない」
では、東日本大震災のあとでも
サイトの更新をやめなかったはなしがでてくる。
「デイリーポータルZ」に状況を変える力はありませんが、いま暗い気持ちでいる人が私たちのサイトを見て、一瞬でも気が楽になることを願っていつも通りに更新することにしました。

自分たちのめざすものをよくわきまえ、
軟派なようでいて、筋がとおっている。
本気でおもしろいとおもえることしかしない。
「デイリーポータルZ」の精神は、
この本でしめされているような きわめて具体的な方針のもとにささえられている。
エリートになれるかもしれないビジネス書として、
また、ブログをかくうえでも、おすすめの1冊だ。

posted by カルピス at 16:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 林雄司 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする