しりあいのハーブショップから声をかけられ、
庭仕事を手つだう。
現場へいってみると、いきなり剪定バサミをわたされ、
「あっちの木をきってください」といわれる。
剪定なんて、ぜんぜんやったことがないのに、
「われわれもにたようなものだから」大丈夫なのだそうだ。
とりかかるまえの説明で、
「今年のびた枝(色がうすいのですぐわかる)の
ちょっと手前をきるとちょうどいいです」といわれる。
やってみると、これがあんがい適切な指示で、
そうなるようにハサミをつかっていたら、
すっきりした木になってきた。
そのあとも、種類のちがう木を4本まかされて
ほんのすこしの説明をうけただけで
わたしひとりがスタッフのつきそいもなく剪定する。
この庭は、スタッフの自宅なので特別とはいえ、
わたしみたいな まったくの初心者に
ずいぶんおもいきったことをさせるものだと、はじめはおもった。
でも、やってみると なんとなくかっこがついてくる。
こんなことをかくと庭師の方におこられそうだけど、
注意するべきポイントをまもり、なおかつ大胆にかりこんでいけば、
けっこうそれらしい姿になる。
剪定の目的のひとつが、しっかり枝をおとして風とおしをよくすることなので、
こんなにハサミをいれても大丈夫か、と心配するくらい
バッサリかったほうがいいみたいだ。
やってみると、はじめての剪定は すごくたのしかった。
快感といってよい。
きっと、道ゆくひとがわたしの仕事ぶりをみても、
まさか剪定が初体験の素人とはおもわないだろう。
脚立にのぼってハサミをうごかし、ときどき枝ぶりをチェックしたりすると
ますますそれっぽい。
なにに似ているかといえば、やっぱり散髪屋さんだ。
やわらかい葉をかりこんでいくときは、とくにそうおもう。
シャキシャキとハサミをうごかして さっぱりさせていくのは、とても気もちがいい。
人間を相手に、まったく散髪したことがないひとが
ハサミをうごかすのはあまりにも無謀だけど、
木は文句をいわないし、ポイントさえおさえておけば、用はたりる。
わたしは、公園や街路樹の手いれをしている職人さんをみて、
特殊技能をもったひとだとおもいこみ、
自分には縁のない技術だときめつけていた。
自分のしらない世界は、すごくむつかしい仕事にみえるけど、
やってることは、あんがいシンプルなうごきかもしれない。
ひくいレベルにかぎれば、そんなに複雑な技は必要ないことがおおいのでは。
造園の会社に就職したら、ながい修行期間をへて、
ようやく剪定をまかせられるのではないだろうか。
やりたくてもなかなかできない剪定を、
きょうはあっけなく体験できた。
わたしは、もう庭の木をみてもたじろかずに
ハサミをうごかせるだろう。
たかいレベルをもとめなければ、
わたしがやっても 最低限の目的は はたせる。
専門家をリスペクトしすぎて おまかせするよりも、
アマチュアレベルでいいから、自分でやってみたほうがおもしろい。
きょうの剪定は、わたしにとってありがたい体験だった。