2015年09月10日

『てくてくカメラ紀行』(石川文洋)あるいて日本縦断した記録

『てくてくカメラ紀行』(石川文洋・笊カ庫)

写真家の石川文洋さんが、
北海道から沖縄まで あるいて縦断した記録。
各県ごとにみじかい「メモ」がそえられているものの、
この本は写真のほうがメインになっている。
「この本」とことわったのは、
石川さんはおなじ縦断旅行を
『日本縦断徒歩の旅』として岩波新書からだしているからだ。
おなじ旅行で2冊かくなんてずるい、
とおもわせないのが石川さんのおひとがらで、
それぞれべつの本としておもしろくよめる。
『てくてく』は写真+文章で、どちらかというと写真集にちかい。
いっぽう『日本縦断徒歩の旅』は文章だけの本だ。
かいてある内容がほとんどちがうので、
だまされたなんて ぜんぜんおもわない(しつこい)。
『日本縦断徒歩の旅』はあるきながらかんがえたこと、
そのあいだにおこった 社会的な事件への感想など、
3000キロ・150日にわたる徒歩旅行が
かなりこまかく記録されている。

石川さんは、ずいぶんまえから
あるいて日本列島を縦断するのが夢だったそうだ。
『日本縦断徒歩の旅』には、
費用をうかすために テントや野宿もおもしろいとおもいつつ、
65歳という年齢をかんがえて無理するのはやめたとある。
予算の根拠となる年金の額や、なにをもっていったかなど、
具体的にかいてあるのがわたしごのみだ。
旅ものの本をよんだとき、
なにをどれくらい準備したのかがわたしは気になる。
こころの記録も大切だけど、
物理的なデーターもわすれずにもりこんでほしい。
石川さんの文章は、ありのままを率直にかいてあり、
その誠実さがわたしはすきだ。
出発まえとあとでの健康診断の数値ものっていて、
あるくのがどれだけ健康にいいかがわかる。
あるく旅行についてのアドバイスもあり、
定年になったらあるいてみたい、
とおもっているひとに いい情報となるだろう。

あるく旅は、冒険でも探検でもないけれど、
日常の延長として、お手軽な非日常性が魅力となる。
自分の足であるくのだから、特別な道具はとくになく、
必要なのはある程度の体力と、こころの準備だけだ。
とはいえ、あるく充実感をかんがえたときに、
日本の道路をあるいてたのしいかというと、
あまり気がそそられない。
あるくひとの安全や快適さがかんがえられておらず、
不愉快な目にたくさんあいそうだ。
よほどコースをえらばないと
苦行の旅になるのではいか。
そうなると、お遍路や縦断旅行みたいに達成感をもとめるか、
熊野古道のような えりぬきの道にするか、
というのが現実的な選択肢なのかもしれない。

そうしたいっぽうで、たのしさ・快適さばかりをもとめがちなのが
わたしのよくないところだともおもう。
やらない理由はいくらでもあげられるけど、
石川さんはむかしからの夢を こうやってじっさいにかなえた。
その記録として『てくてくカメラ紀行』と
『日本縦断徒歩の旅』は説得力がある。
65歳になった石川さんが、夢と自分のちからとをすりあわせ、
現実的な手段をえらびながら ゴールの沖縄まであるきとおしたのは、
難易度のたかい挑戦であり達成だ。
その実行力に、わたしは敬意をあらわしたい。
80歳でエベレストにのぼった三浦さんもすごいけど、
石川さんのこの日本縦断は、
たくさんのひとに ちからをあたえるのではないか。

posted by カルピス at 15:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする