2015年11月01日

あなたがそうおもってるだけ

「ま、いいか」「きっとうまくいく」など、
気らくにしてくれることばがいろいろあるなかで、
「あなたがそうおもってるだけ」というのも
かなり上位にくるのではないか。
なにしろそれはあなたの意見にすぎなくて、
わたしとは関係ないと はっきりつきはなしているから、
そこでもうふたりの会話はおわっている。
そのさき建設的なはなしあいになる可能性は
かなりうすい。

たとえばきのうの新聞に、
出口治明氏の『本物の教養』という本の
広告がでていた。
・「自分の頭で考えられる」ことが教養
・謙虚でなければ教養は身につかない
・速読は百害あって一利なし
など、章ごとの項目が紹介してある。
いつものわたしだと、
それらのひとつひとつに感心してしまい、
ひるがえって自分がいかにつまらない人間かと
下をむきがちだけど、
「あなたがそうおもってるだけ」といいかえせば
まったくなんの問題もない。
たいていの発言は、
「あなたがそうおもっているだけ」であり、
ひとつのかんがえ方にすぎない。
(『本物の教養』が、つまらない本といっているのではない。
あくまでも「たとえば」のはなし)。

新書のタイトルで
「◯◯しなさい」「◯◯するな」など
上から目線のものがあると反発したくなる。
断定的で、ひとの意見をとりいれる余地などなさそうだ。
「あなたがそうおもってるだけ」と、
わたしはいつもあいの手をいれる。

村上春樹さんは
「そういうものだ」と「それがどうした」を
「人生における2大キーワード」にあげている
(『村上朝日堂はいほー!』)。
このふたつは、おもに自分にいいきかせるタイプのフレーズで、
いっぽう「あなたが〜」は
相手にいいかえすとき 役だつだろう。
あんまり連発せずに、
お腹のなかでつぶやくだけのほうが
人間関係のためにはいいかもしれない。
とはいえ、もしだれかに「あなたが〜」といわれたとしても、
それほどショックはうけないのではないか。
相手をやりこめるというよりも、かわすときにちからを発揮する。
攻撃よりもうけ身が得意だ。
みかけほど危険な表現ではない。

村上さんは、
こういう考え方に基いて生きていると、気楽に生きていくことはできるけれど、人間的にまず向上しない。(中略)物事にはほどほどというのが必要である。

と注意がきもそえている。
「あなたが〜」も、たしかにその「ほどほど」がむつかしい。

posted by カルピス at 16:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする