『イントゥ・ザ・ワイルド』
(ショーン=ペン監督・2007年・アメリカ)
ジョン=クラカワーの『荒野へ』を映画化した作品だ。
何年かまえに原作をよみはじめたけど、
とちゅうでやめてしまった。
なにごとも極端におもえる 主人公の青年についていけなかった。
なぜじゅうぶんな装備をもたず、
冬のアラスカにとどまろうとしたのかがわからない。
ダットサンの燃費がすごくよかったことだけをおぼえている。
映画をみてみると、
これは青春記に独特の狂気をあつかっただけではなく、
家族のものがたりでもあったことに気づく。
両親の夫婦関係、両親との親子関係に
アレックスはおさないころから
批判的にならざるをえなかった。
アレックスにとって、両親を否定することが
ものやお金に価値をおかない生きかたにつながっていく。
アレックスは大学を卒業するとすぐに放浪の旅にでる。
口座にのこっていたお金を寄付し、
旅さきでも必要でないお金をもやしたりして
ものにたよらない精神世界をもとめる。
彼とであったおとなたちのおおくは、
ピュアすぎる彼にとまどいながらもふかい共感をしめす。
わかいころのおろかなふるまいとだけでは
かたずけられないなにかを
彼とことばをかわしたひとは かんじずにおれない。
彼がくちにすることばは
そんなにめあたらしいわけではない。
「あたらしい経験は人生をゆたかにする」
「人生のたのしみは人間関係だけじゃない」
「しあわせが現実になるのは、
だれかとわかちあうとき」
そんなことはわかりきったことで、
いまさらいわれなくてもわかっている。
でも、放浪の旅をつづける彼からこのことばをきくと、
ひとつひとつが胸にひびいてくる。
彼のことばは、どれも身銭をはらった経験に
うらうちされたものばかりだ。
アレックスはささいなアクシデントにより、
アラスカの荒野で死んでしまった。
無事に山からおりたとしたら、
アレックスはその後をどう生きただろう。