ほしてあったイネを ようやく脱穀する。
11月の旬になるまで稲穂をほっておいたのは、
脱穀機の値段がさがるのをまっていたからだ。
夏には2万6000円くらいで ネットにでていた足踏脱穀機が、
9月にはいると5万円に値あがりしていた。
脱穀機をつかうのは秋だけなので、
必要とするひとの足元をみているような気がする。
だったらまた値段がさがるのをまとうと、
そのまましばらくようすをみていた。
でも、11月になってもたいして値段がかわらない。
冬になってしまうといやなので、
3万6666円で手をうつことにした。
ブルーシートをひろげ、足踏脱穀機をおく。
ドラムにV字型の金具がとりつけられており、
ふみこみ式のペダルをふむと
そのドラムがまわるしくみになっている。
そこに稲穂をつっこんでワラからモミをきりはなす。
原理は簡単だけど、かなりたいへんな仕事だ。
ある程度のスピードでドラムをまわさないと
うまくモミがはなれない。
ペダルをふみながら稲穂をドラムにあてるのだから、
きゅうくつな姿勢でもあり、
ももの裏側や腰がすぐにいたくなった。
もうひとつべつの脱穀に「千歯こぎ」がある。
ギザギザの歯をとりつけた道具に穂をあてて、
ひきぬきながらモミをとりのぞく方法だ。
しくみとしては簡単だけど、ものすごく効率がわるいそうで、
罪人の拷問につかわれるくらい たいへんな仕事らしい。
それにくらべたら、足踏脱穀機は はるかにマシだろう。
けっきょく3時間ほどですべての脱穀をおえる。
とりわけたモミは20キロ程度で、
これをさらにモミすり機にかけたら
もっとすくなくなる。
田んぼにまいたのは2.7キロの種モミで、
その10倍にもならなかったのだから、
ずいぶん残念な米づくりだ。
脱穀はおわったものの、
まだたくさんのワラが モミのなかにまぎれこんでいる。
ふつうならここでトーミという機械にかけて、
モミとワラをわけるのだけど、
わたしの場合は量がすくないから 手作業でまにあう。
天気がいい日に、さいごの仕事としてとりくもう。
このまえみた映画『イントゥ・ザ・ワイルド』では、
アメリカの大平原で麦を収穫する場面があった。
10メートルくらいの刃をつけた
ものすごくおおきな収穫用の車を
何台もならべてはしらせる。
かりとられた穂はすぐに脱穀され、
収穫用の車と平行してはしっているトラックに
どんどんながしこまれていく。
あまりにも規模がちがいすぎ、あたまがクラクラしてきた。
日本のコンバインなんか、
むこうではおもちゃみたいなものだろう。
何キロもつづく畑で作物をそだてると、
どうしてもああした大型の機械が必要になる。
おなじ農業といっても、なにもかもがまったく異質であり、
日本の収穫とは まったくべつの仕事にしかみえない。
しかし、よくもわるくも
こうした超大型の機械で収穫するのを前提に、
世界の食料事情はなりたっている。
足踏脱穀機で、ガソリンをつかわずに農業ができるのは
きっとすごくしあわせなくらしだ。