2015年12月08日

福岡マラソンの実況と解説がおもしろかった

日曜日におこなわれた福岡マラソンをみていたら、
バイクのうしろに松岡修造さんがのって
選手たちのようすをつたえていた。
松岡さんは、マラソンのレースをみるのがはじめてのようで、
スピードとピッチのはやさ・迫力におどろき、
そのおどろきを そのままことばにだしている。

アナウンサーが松岡さんにコメントをもとめると、
まるでスタジオにいるように、
おちつきはらった声がきこえてくる。
たとえば台風の状況をつたえるアナウンサーは、
現場の迫力をあらわそうと、
あわただしいはなし方になるけれど、
松岡さんの場合は、まったく反対のあらわれ方だ。
とてもバイクのうしろからはなす声とはおもえない。
あつい発言でしられる松岡さんが、
しみじみと感心し、そのおどろきをつきつめたら、
こういう表現になるのかと、興味ぶかい実況だった。

松岡さんらしかったのは、
アナウンサーからたずねられているのに、
こたえる相手が瀬古さんだけにかぎられていた。
自分の疑問・感想を、瀬古さんにじっくりたずねる形で、
ふたりだけの世界をつくろうとする。
実況というよりも、
まるでふたりだけでおしゃべりをしてるみたいに、
ほかのひとの存在が意識にない。
画面をみると、バイクのうしろで
さかんに口や手をうごかしている松岡さんがみえる。
そのうごきは情熱的なのに、
おちつきはらった声とのズレがおかしい。

瀬古さんの解説は、いつものように
気もちのつよさをもとめる発言がおおい。
レース展開を分析するときに、
「ここですこしやすんで」
「ふたりでちからをあわせ」
というのがいかにも瀬古さんらしかった。
やすんで、というのは、
すこしベースをおとすだけのことだし、
ふたりで、というのも
いっしょにはしる選手をつかまえたら、
ふたりではしることで
自分の意欲をかきたてよう、という意味であり、
べつにチームメイトにであったわけではない。
今回のレースは、キロ3分という、
めちゃくちゃはやいペースで
スタートからペースメーカーがひっぱっていた。
それを、ほんの数秒おとすのが
瀬古さんのいう「すこしやすんで」なのだから、
マラソンというのはたいへんな競技だ。

「すこしやすんで」
「ふたりでちからをあわせ」
なにがおきても
瀬古さんはそれをはしるちからにかえようとする。
淡々としたはなし方だけど、
めざす方向はものすごくポジティブで、
瀬古だから松岡さんとのコンビがなりたったのだろう。
どの競技にしても、いくところまでいって
たかみへとつきぬけたひとの発言はおもしろい。

注目されていた川内選手は、
残念ながら10キロ地点でリズムをくずしてしまい、
2時間12分台の8位におわった。
しかし、いったん先頭集団からはなれながら、
ぜったいにレースをなげず、しぶとくはしりつづけて
12分台にまとめたのはすばらしい。
調子をくずしてだせるタイムと順位ではないのだ。
結果としてはリオデジャネイオリンピックが
むつかしくなったけれど、
川内さんらしいレース内容であり、
ますます川内さんがすきになった。

posted by カルピス at 12:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする