2015年12月21日

細マッチョ大会

体育館のプールでおよいだあとジャグジーにむかったら、
さきにお湯につかっていた男性がはなしかけてきた。
わたしのとなりのコースでおよいでいたひとだ。
ボディビルダーのように発達した筋肉と、
脂肪のないからだつきをしている。
どんなスポーツをしているのかとたずねられたわたしは、
わかいころ水泳をやっていたとこたえた。
そのひとのからだがすごかったので、
わたしもトレーニングについてきいてみると、
「細マッチョ大会にでています」といわれた。

最近はいろんなことばがつぎつぎにでてくるので
ついていくのがたいへんだ。
流行語のトリプルスリーなんて 
わたしはきいたことがなかったし、
IoTとかノームコアなんていわれても、
なんのことかわからない。
でも、細マッチョは、そのことばからだいたい想像がつく。
筋肉ムキムキのマッチョではなく、
一般人の体型からそんなにはずれない、
自然なうつくしさをめざした体型だと わたしは理解していた。

何年かまえから、雑誌『ターザン』が
細マッチョをあおるような記事をのせるようになった。
そのときは、あたらしいブームをつくりたいメディアが、
くるしまぎれにうちだした概念であり、
いきのこって市民権をもつことばになるとはおもわなかった。

それにしても「細マッチョ大会」だ。
そんな大会がひらかれるようになったとは。
ネットをみると、「細マッチョ大会」は通称であり、
一般的には「ベストボディ大会」とよばれているらしい。
ジャグジーでいっしょになった男性によると、
ようするに「かっこよさ」をめざす大会なのだという。
ボディビルは圧倒的な筋肉の量がもとめられるけど、
細マッチョは常識的な範囲におさまるプロポーションなのだろう。
いまの時代に マッチョをめざすのは頭がわるそうだけど、
細マッチョなら自分でも納得できるし、まわりにもインパクトがある。
大会では、ボディビルみたいにポーズをとるのかとたずねると、
ジーンズをはいて(上半身ははだかで)
ファッションショーみたいに 舞台をあるくのだそうだ。
応募するときには作文もだすといわれた。
かっこよさをめざすと宣言してトレーニングにはげみ、
自分がもっともかっこよくみえるポーズをとり、
モデルみたいに舞台をあるくなんて、
わたしにははずかしくてとてもできない。
とにかく「かっこよさ」を堂々と口にするのだからすごい。
すこしまえまだと、「かっこよさ」はまわりがきめることで、
自分からもとめるものではなかったのに。

ジャグジーでのおしゃべりはとても興味ぶかかったけど、
そのうち失礼な質問をしそうな気がして
はやめにきりあげた。
細マッチョになったらもてるかどうかを、
きけばよかったと あとになっておもいつく。
「かっこよさ」をもとめていはいるけれど、
女性からみとめられるかどうかについて、
きっと彼らは あまり関心がないのではないか。
さいしょの動機がどうあれ、細マッチョをめざしているうちに、
ナルシストへの傾向がたかまるような気がする。

世の中にはいろんなうつくしさがあるものだ。
「かっこよさ」をめざすなんて、
まえだと冗談でしかくちにできなかったのに、
いまではりっぱな大会までひらかれている。
トリプルスリーの意味はわかったけど、
「細マッチョ大会」ということばは
ずいぶんとおくにきたとかんじさせる。

posted by カルピス at 14:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする