2016年01月07日

よろしくおねがいします。

まえにつとめていた職場で、
あたらしく事業所を利用される方の
歓迎会がひらかれたとき、
「よろしくおねがいします」をつかわないよう提案してみた。
たいていの職員は、こうした場合 かんたんな自己紹介のあとに、
「よろしくおねがいします」でおわることがおおい。
みんながおなじしめくくりをしては おもしろくないので、
たまにはちがった発言となるように しばりをつけたのだ。

やってみるとわかるけど、
「よろしくおねがいします」がいえないと、すごくこまる。
こまるけど、おもしろかった。
禁止されてみると、ひごろどれだけこのことばを
イージーにつかっているのかがよくわかる。
なにを「よろしく」なのか、
これだけではさっぱりわからないのに、
いったほうも いわれたほうも、
なんとなく納得できるからべんりなことばだ。

そもそも「よろしくおねがいします」に、
意味なんてない。
これはあいさつのひとつであり、
「こんにちは」に意味がないのとおなじで、
「よろしくおねがいします」は情報をふくまない。
ほかにも、たとえば葬式のときに「このたびは・・・」を
きんじられたら すごくこまる。
「おやすみなさい」にかえて、
たまにはちがうことばをつかいなさい、
なんてやられたら ベッドにもいけない。

ただ「よろしくおねがいします」は、
「おはよう」や「こんにちは」といった
完全なあいさつよりも なんとなく内容がありそうだ。
このあいまいさことが「よろしくおねがいします」の
ほんとうの意味ではないか。
なにかをいっているようで、じつはなにもいってない。
その場にいるひとが身内どうしとかんじる空気をつくり、
わたしも仲間のひとりですよと、つたえているだけだ。
「よろしくおねがいします」こそが、
日本語らしいことばかもしれない。

「よろしくおねがいします」をつかわずに
わたしがどんなあいさつをしたのかは わすれてしまった。
まえは あいまいなことばをきらっていたのに、
このごろは 日本語特有の便利な表現として
平気で連発している。
あいまいさがわるいなんて おもいこみにすぎなかった。
「よろしくおねがいします」をマスターしたおかげで、
わたしは日本人になった。

posted by カルピス at 20:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする