自由ポータルZにえらばれず くやしかったので、
『まことに残念ですが・・・』を図書館でかりてくる。
名作への不採用通知を、160通あつめた本だ。
だれもがしってる作品でも、
「まことに残念ですが」とことわられつづけ、
何年もかかって ようやく陽の目をみたものがたくさんある。
あの文豪も、有名な小説家も、
のきなみばっさりと きりすてられている。
ずいぶんひどくけなされながら
それでもあきらめず かきつづけたおかげで
作家たちは成功にたどりついた。
わたしが今回えらばれなかったといって、
そんなにへしゃげなくてもいいと勇気づけられる。
えらぶ側が、つねにただしい判断をくだしているとはかぎらない。
みる目のなかった編集者こそ、ふかくはじいるべきかもしれない。
とはいえ、おとされたものの心理は複雑だ。
就活もそうらしいけど、全人格を否定された気がしてくる。
かんがえてみると わたしは、
デイリーポータルから「残念ですが」の連絡すらうけていない。
ただはじかれただけなのも、けっこうさみしいものだ。
本書にある出版社からの返事をいくつかぬきだすと、
『大地』(パール・バック)
まことに残念ですが、アメリカの読者は中国のことなど一切興味がありません。
『愛へ戻る旅路』(メアリ・H・クラーク)
われわれも、彼女の夫と同様、ヒロインの退屈さに耐えられなかった。
『未発表短篇集』(ハリー・クルーズ)
火にくべよ、お若いの。焼いてしまうがいい。炎がすべてを浄化してくれるだろう。
『イプクレス・ファイル』(レン・デントン)
まことに残念ですが・・・といいたいところだが、本書を却下するのは残念でもなんでもない。
あの『チャタレイ夫人の恋人』でさえ
「ご自身のためにも、これを発表するのはおやめなさい。
なんていわれている。
おおもうけのチャンスをみすみすのがし、
ほかの会社から出版された本が 大ベストセラーになったら、
担当者はどれだけ後悔したことだろう。
この不採用通知集は、
あたらしい作品を評価するむつかしさとともに、
編集者たちがのこした まとはずれな感想の、
作品集でもある。
ジェイムズ=M=ケインの有名な『郵便配達は二度ベルを鳴らす』は、
出版社からの断り状をとどけにくる郵便配達人が、
必ず2度ベルをならしたから このタイトルがつけられた。
印象ぶかいタイトルは、かなしい体験がヒントになっていた。
おとされつづける体験も、ときにはヒットにつながることもある。
応募したのに えらばれなかったとしても、
ナイーブになりすぎる必要はない。
本書の序文には、
編集者であるヘンダースン氏の体験が紹介されている。
ヘンダースン氏がうけとった返事には、
きみは深刻な小説を書いた。それは結構なことだが、太古からの悲しむべき問題は、当節、だれが深刻な小説を出版するか、ということである。
とかかれていた。
ヘンダースン氏は、おちこむよりも
「深刻な小説」と認められたことだけをよろこび、
手紙の後半は無視している。
これくらいずーずーしくないと精神的にきつい。
不採用通知にたいする ただしいせっし方というべきだろう。