2016年03月12日

麻酔なしの手術にたちあう

ピピのシッポのキズがウミをもち、
そこがやぶれ 皮膚がずるむけになっている、
と先日のブログにかいた。
かかりつけの病院に、おとついピピをつれていく。
先生は キズのふかさ・おおきさにおどろかれ、
でも、これまでにたようなケガをなんどもくりかえしてきたので、
こうなるまでほったらかしたわたしを しかったりせずに、
淡々と治療してもらえた。

口内炎と腎不全でからだがよわっているピピは、
麻酔をうったら そのままむこうへいってしまうおそれがある、
と先生がいう。
つまり、麻酔なしでキズぐちをぬうわけで、
ピピに筒状の拘束着をつけ、
うごかないよう わたしがおさえ、先生が治療にあたる。
治療がすすむにつれ、なまなましい肉や骨がみえ、
ピピはなんとかにげようと おおさわぎする。
たった2.2キロしかない よわったネコでも、
必死になってあばれると、なかなかとめられるものではない。
わたしはキズぐちをみないよう顔をそむけ、
ピピにはなしかけながら なんとか治療がおわった。

最近『戦場のコックたち』(深緑野分)をよんだせいか、
戦場での衛生兵をおもいうかべる。
衛生兵は、2.2キロのネコがあいてではなく、
いたみや恐怖にふるえる兵士たちにむきあうので、
さぞかしたいへんな任務なのだろう。
麻酔なしでキズをぬわれるピピはくるしいし、
先生にしても むつかしい判断だったろうけど、
ピピをおさえているわたしだって ヘトヘトだった。

いぜんみた映画に、旧ユーゴスラビアのどこかの国を
国連が爆撃するはなしがあった。
主人公のわかい男性が、コカインかヘロインにラリったまま
空爆の荷物にまぎれ、カゴごとパラシュートで戦場におとされる。
たまたま野戦病院にたどりつくと、
そこでは医薬品が徹底的に不足し、
片足を切断する手術も 麻酔なしでおこなわれようとしていた。
ベッドにねかされた兵士は、麻酔なしでの手術ときき、
うろたえ 混乱し、おおさわぎする。
主人公の男は、自分が麻薬をもってるのをおもいだし、
麻酔のかわりに患者にのませ、
いたみなしで ぶじに手術が成功するのだった。

『プライベート・ライアン』にも、
戦場でおおけがをした兵士に、
仲間たちがモルヒネをうつ場面がある。
おおくうちすぎると、そのまま死んでしまうとしりつつ、
キズぐちからの出血がとまらず、
もうたすからないとわかっている兵士にたいし、
せめていたみだけでもやわらげようと、
3本目、4本目のモルヒネをうつ。

映画でよくとりあげられるように、
戦場といえばいたみであり、
いたみといえば麻酔なのだ。
現代の日常生活において、麻酔なしの手術は
ふつうおこなわれない。

麻酔なしで手術(ぬうだけだけど)にたえたピピは、
家にもどると すぐにごはんをたべ、
居場所とするコタツのなかにもぐりこんだ。
病院の先生に、キズ口をなめないよう
首にカラーをまくようにいわれたけど、
ピピがあんな不自然な装置に我慢できるわけがない。
でも 先生にそんなことをいう勇気は わたしになく、
カラー代1500円、全部で7500円をしはらって病院をでた。
キズがよくなったせいか、ピピは食欲をとりもどし、
何度目かの危機を なんとかまた きりぬけたようだ。
いつおわかれがくるかわからないので、
主食のカンヅメをすこしずつかいたしていたけど、
まだむこうの世界へいくつもりはなさそうだ。
おいわいに、モンプチの牛テリーヌ3個いり×24のセットを注文する。
夜2〜3回おこされ、ベッドのうえでおしっこされる生活を、
ありがたいことに、もうしばらくつづけられる。

posted by カルピス at 23:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ネコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする